万博会場で集団万引きの「撮り鉄」が逮捕…「鉄道ファン」より「外国人観光客」が大事にされる“もっともな理由”とは
大阪・関西万博の会場内にあるオフィシャルストアで、グッズが万引きされる事件が発生。大阪府警が逮捕したのは“鉄道好き”という大学生6人であった。彼らは鉄道の写真撮影を趣味にする“撮り鉄”の仲間で、東京から東海道新幹線に無賃乗車して大阪入りしたと話したそうである。
警察の取り調べに対して、彼らは日頃から無賃乗車を繰り返していた旨を供述し、万博会場にも大人料金ではなく、12~17歳の“中人”チケットで入場していたという。これらの行為に対し、SNS上では当事者の大学生だけでなく、撮り鉄、さらには鉄道趣味に対してもバッシングが巻き起こっている。【取材・文=宮原多可志】
無人駅が無法地帯に
鉄道ファン歴20年という男性は、今回の事件に憤りを隠せないと話す。
「ただでさえ、鉄道ファンのイメージが悪化する事件やトラブルが相次いでいます。あろうことか、もっともバッシングを受けている撮り鉄が、しかも鉄道に無賃乗車して逮捕されたのですから、絶対に許せません。こうした問題が続くと、鉄道ファンが白い目で見られるようになるし、イメージが低下することは避けられないと思います」
そう話す一方で、鉄道ファンのイメージは既に低下しており、鉄道会社も彼らの対応に手を焼いているという声もある。「鉄道の知識を悪用すればいくらでも不正乗車ができてしまう」と指摘するのは、現役の鉄道駅員である。
「鉄道旅行をする“乗り鉄”のなかには、駅が無人になる時間帯や、駅員がいない駅、警備が手薄な駅などに詳しい人が少なくない。悲しい話ですが、そういった時間帯や駅を狙って、無賃乗車を行う人もいる。それどころか、情報を仲間内で交換しているグループまでいるようで……。そもそもネットにはそんな情報が転がっているので、鉄道会社にとっては本当に迷惑です」
筆者はかつて、青森県の無人駅に、なんと東京の“御徒町駅”の初乗り運賃の切符が落ちていたのを見たことがある。おそらく、東京から普通列車を乗り継いで、無人駅で下車したのであろう。いったいここまで何時間かかったのか……と思いを馳せてしまうが、もちろんれっきとした犯罪行為である。
前出の駅員によると、「地方にはそういった切符が何枚も落ちている駅があります。無賃乗車の聖地のようになっているし、会社側も抜本的な対策をとらない。事実上、野放し状態」とのことである。
なぜ撮り鉄が問題視されるのか
撮り鉄の最大の問題点は、とにかく鉄道会社にとってまったくありがたくない存在ということである。「デイリー新潮」で何度かレポートしたように、撮り鉄に悩まされている鉄道会社は少なくない。
「珍しい列車が走る日には、駅によっては社員が警備に動員されることもあります。ただでさえ人手不足なので、本当に困る。それでも乗り鉄なら鉄道を利用してくれるのでいいのですが、撮り鉄の場合は鉄道を利用しない人が非常に多く、鉄道会社にお金を落としてくれません。せいぜい、入場券でホームに入るくらいです。
撮り鉄は基本的に、カメラや三脚など大きな機材を抱えているため、車移動になるのです。そして、沿線に無断駐車したり、畑に入ったりするなどして住民に迷惑をかける。そういったクレームは全部、鉄道会社に入ります。人手不足なのにクレーム対応に時間を割かなければいけないのは、ローカル私鉄などにとってはかなり痛手なのではないでしょうか」(同)
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