万博会場で集団万引きの「撮り鉄」が逮捕…「鉄道ファン」より「外国人観光客」が大事にされる“もっともな理由”とは
人が写っていない写真がいい
最近も、岐阜県大垣市にあるひまわり畑で、撮り鉄がトラブルを起こしたという報告がSNSに上がっていた。ひまわり畑は東海道新幹線の線路のそばに広がり、見たら幸運を呼ぶ新幹線といわれる“ドクターイエロー”と、黄色いひまわり畑を合わせた写真を撮ることができるため、絶好の撮影スポットなのである。
ところが、ある撮り鉄が、ひまわり畑の中にいた観光客に「邪魔だ」などと罵声を浴びせたという。そういった光景は頻繁に目撃されているようで、禁止されている三脚を立てて撮影を行った人もいるらしい。事態を重く見た写真家や鉄道ファンは少なくないようで、SNSで注意喚起が行われている。
撮り鉄が「どけ!」「邪魔だ!」などと罵声を浴びせるのは、彼らにとっては人が写っていない、鉄道だけがしっかり写っている写真が最高という不思議なローカルルールがあるためである。花や木などは基本的に問題がないが、伸びすぎて列車に架かってしまうようではよくないという。そのため、勝手に線路沿いの木を伐採したり、草むしりをしたりする撮り鉄も見られる。写真のためにはやりたい放題なのだ。
こうした理解不能な行動をとるのは、撮り鉄は有名写真家が撮った“お手本通り”に写真が撮れればいいという価値観があるためだ。学校の美術の授業と同じで、お手本通りに模写できた絵が絶賛されるのである。列車がただ走っているだけの写真が、撮り鉄の仲間内では褒められる。プロの鉄道写真家とも異なる、撮り鉄界隈だけの文化と言っていい。
仮に人が写り込んでいたとしても、AIを使えばいくらでも消すことができるので、問題ないはずである。プロの写真家でも、障害物を画像編集ソフトで消すのはよくあることだ。それを使わないのは、良い写真よりも、お手本通りに撮れたという事実こそが撮り鉄にとっては快感だからなのである。
撮り鉄は鉄道写真界隈でのローカルルールは重んじるが、残念ながら一般社会のルールを守ろうとしない。これが、鉄道会社からも一般人からも嫌われてしまう最大の要因なのではないだろうか。
鉄道会社は富裕層とインバウンドを重視
さて、こうした不祥事が相次いでいるせいか、鉄道会社も鉄道ファンに向けたイベントを積極的に行わなくなりつつあるのではないか、という指摘もある。切符を見てもよくわかる。JR各社は格安旅行の定番で、乗り鉄必携アイテムと言われた「青春18きっぷ」の仕様を2024年冬季分から大幅に変更。非常に使いにくくなったといわれる。
一方で、鉄道ファンよりも国内外の富裕層に向けたフリー切符や旅行商品は充実させている。インバウンド客が新幹線のなかでトラブルを起こすニュースが報じられているが、それでも鉄道会社が彼らを大切にしているように見えるのは、彼らがなんだかんだでお金を落としているためであろう。ある大手鉄道会社などは、既に鉄道事業よりも不動産事業に注力しつつあるといわれて久しい。
ローカル私鉄はまだ、鉄道ファン向けのイベントを積極的に開催している。しかし、人手不足のなか、いつまで続けられるのだろうか。鉄道ファンに限らず、ファンの界隈は迷惑行為を働く一部の人に対して「自分は関係ない」と考えがちだ。しかし、ファン全体でマナーの悪い人に対しての注意喚起を行っていかなければ、ファン活動を制限される事態も起こり得るかもしれない。
[2/2ページ]



