農水官僚「天下り」のひど過ぎる実態 「農家を犠牲にして現状維持」 改革は可能なのか
自分の利益を優先し、農家を犠牲に
令和2年(20年)にJA全中が農協組合員を対象に調査した報告書がある。それによると、正組合員の平均年齢は69歳。つまり現在は74歳くらいということだ。これは基幹的農業従事者の平均より5歳も高い。さらに販売金額が300万円未満の零細な経営体が75%を占める。彼らの大半は後継者がおらず、数年以内にリタイアするだろう。耕作しなくなった田畑を集約して大規模化すれば、経営を引き継ぐ者は現われるが、規模を拡大すればするほど農家は農協を離れていくのである。ある農協組合長は、これこそ深刻な問題なんですと言い、こう説明してくれた。
「たとえば購入する農機具は、農機具メーカー→全農→全農都道府県本部(経済連)→地元の農協(単協)→農家と流れます。農家に届くまで4段階ほどペーパーマージンを取られる。単協が直販できればもっと安くできるのに、誰もやらない。肥料だって出荷段階で約3割高いのです。なぜ高いのか、原価を公開しろと言っても絶対やらない。大規模農家は経営に敏感だから、わざわざ農協で高いものを買わないですよ」
農水省は、農家が激減しても農地の大規模化とスマート農業でなんとかなると思っている。だが、スマート化で人が少なくなれば、農道や水の管理が難しくなり、さらに地域社会が崩壊していくだろう。それだけではない。農家に去られた農協は、農協法で定められた協同組合といえるだろうか。この組合長は言う。
「戦後、食管制度があった時代は農協は半官半民でやってきたんです。元は官僚制だから、非効率にできてるんですね。まず自分の組織を守り、自分の利益を優先し、農家を犠牲にするんです。組合員から預かったお金で2兆円以上の損失を出したのに、誰も責任を取らないのもそうです」
企業などの組織は30年もすれば衰退期に入るといわれる。農協はすでに設立から70年を超えた。改革がなければ、今の農協は、それほど遠くない未来に消えざるを得ないだろう。
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