「下野しかない」 自民・古川禎久氏が激白 「自民党は“役に立つ道具”ではなくなった」
歴史的惨敗を喫したにもかかわらず、何事もなかったかのように「自公政権」が続けられようとしている――。この矛盾した政治状況に対し自民党の中からも「否」の声が上がっている。憲政の常道に従うなら下野すべきである、と。同党の現役代議士・古川禎久(よしひさ)氏による憂国の激白。【取材・文/森功(ノンフィクション作家)】
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〈ショッキングな言葉が飛び出したのは、さる7月22日のことだ。参院選の惨敗から2日経たこの日の昼下がり、自民党の実力5議員が国会に近いザ・キャピトルホテル東急の中華料理店「星ヶ岡」に集った。元総務大臣の佐藤勉、元経産大臣の萩生田光一、前経産大臣の齋藤健、元国土交通副大臣の御法川信英、そして元法務大臣の古川氏という顔ぶれである。
もう下野しかない――。
自民党幹事長の森山裕にそう進言したという。〉
ときどきあのようなメンバーで昼食会をやっているのです。定期的に会合を持ってきたわけではなく、たいていサトベンさん(佐藤のこと)が声をかけ、都合のつく人が集まって飯を食う。その程度の集まりで、木原(誠二、党選挙対策委員長)も来る予定でしたが、あのときは都合が悪くて参加できませんでした。だからメンバーは本来6人。それで、ああいう話になったわけです。
そのあとサトベンさんが森山幹事長のところへ行って、われわれの意見が一致したと報告した。それでマスコミが飛びつき、「誰それがこう言った」とか、そんな話が出てきたのです。この行き詰まった局面をどう打開していけるのか。簡単に言えば、そんな切羽詰まった思いを共有している。だからみなが下野するとの意見で一致したという報道になってるわけです。けれど、根底にある考え方はそれぞれ異なるでしょう。
「下野すれば野党は政権を担う大変さが分かる」とか「どうせ野党は何もできないからこちらに政権が戻ってくる」というような報道も見かけました。それはその人が話しているだけで、真意は分かりません。下野については、人それぞれレトリックや描いているイメージ、ロジカルな組み立てなどがあるのでしょう。
「残された道はただ一つ」
私自身でいえば、憲政の常道に従うならそうなるということです。昨年秋の衆院選に続き、今回の参院選でこれだけはっきりと民意が示された。あくまで私の考えなんですけれど、民意が明確に示され、国民の信任を失った政権には正当性がありません。民主政治は民意に支えられているわけだから、どんな素晴らしい政策であっても、国民の理解と協力がなければ機能しない。だから、本来の政党政治のあり方に照らし、お預かりしている政権を国民にお返しするというのが道理であり、それが下野という言葉になるのだと考えています。これは筋論であり、政党政治家として、あるいは政党としての姿勢は本来そうあるべきだと思います。
しかしながら、現実的にそれはできない。首班指名選挙で、野党の誰かに票が集まることはないでしょう。もっと言えば、仮に自民党が下野し、減税を主張する党が集まった政権ができると、日本の財政運営を脅かす恐れも出てくる。財源を見つけないまま減税を決めたイギリスのトラスショックの例を引くまでもなく、日本国としての信任を損なう重大な懸念があります。
つまり自民党は負けたから民意に従って下野します、という無責任なことはできません。かといって、自公でこのまま政権を続けますか、と問われても正当性がない。すると残された道はただ一つ、新しい連立政権を模索する以外にありません。
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