90年代に男子中高生を熱狂させた「少年マガジン」のレジェンド漫画家が明かす“がん闘病”…「死そのものよりも怖い」と感じるものとは
死の前の苦しみの方が怖い
――入院しながらでも締切を守るところに、プロとしての矜持を感じます。
玉越:今回のがんで、僕は長い漫画家人生で初めて休載を経験しました。「BOYS BE…」が終わっても、すぐ漫画を描きたいと言って新連載をはじめたほどで、一定期間、漫画を描かずに過ごしたのも初めて。本当に休んだことがないし、思えば、ずっと休みなく描いていましたね。それくらい、僕は漫画を描くのが楽しくて仕方ないんですよ。
――玉越先生はSNSで自身ががんであると告白し、大きな衝撃を与えました。3年以上の闘病生活を送っておられます。
玉越:2022年の8月に大腸がんの手術をしてから、2023年はしばらく何もなかったのですが、11月に肝臓への転移が発覚。2024年の2月に手術をしましたが、10月に再び肝臓に転移していることがわかりました。今年の1月に手術をしましたが、6月に肝臓への再々転移が発覚し……現在は抗がん剤の治療中です。
がんになると、やはり死に対する不安に時折襲われますし、死について考えることが何度もあります。少し前、テレビで若い子が、「私は死は怖くない」と言っていたのですが、僕は死そのものよりも、その前の苦しみの方が怖いと思っています。手術中やその直後、さらに抗がん剤のアレルギー反応など、様々な要素が痛みや苦しみの原因です。
そんなことを考えてしまうのは、僕の専門学校時代からの友人に皮膚がんで亡くなった人がいるからです。彼は絵が凄く上手かったのですが、声帯をとって、左手を切断、その後に肺を切除して亡くなっています。死に至る前の過程が壮絶ですよね。彼のように、苦しんで先に逝った例を知っていると、次は自分の番かな……と不安になってしまいます。
YouTubeでも闘病生活を配信している方がたくさんいます。僕と似た治療をしている人を見て、最後にお亡くなりになった例もあります。そういう例を見ると、精神的にもダメージがありますね。頑張ってほしかったなと、思わずにはいられません。
第2回【「森川ジョージ先生はツンデレぶりが凄いですね(笑)」 がん闘病中の「BOYS BE…」作者が語った“漫画家としての使命”】では、人気漫画家の玉越博幸先生が、がんと闘いながら創作に打ち込む理由について語っている。
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