日経新聞がスクープ…業界激震の千代田区「マンション転売規制」のウラ側 “3LDK2億円超”市場にメス? 要請を受けた「不動産協会」の困惑とは

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マンション価格の先行きについて、不動産協会専務理事の見解は

 ただ一方で、東京23区の不動産価格の“沸騰”が続いているのは事実だ。特に都心3区と呼ばれる千代田区、中央区、港区ではファミリー向けとして一般的な70平米・3LDKのマンション価格が2億円を超える例も珍しくない。

「住みたくても住めない」という都心不動産の現状について、協会はどのように考えているのだろうか。

「都内のマンション価格高騰は、一つは建築費の高騰や開発用地の減少に伴う原価の上昇、もう一つは供給戸数の減少による希少性の高まりに起因するものと考えています」

 そう説明するのは、千代田区との折衝にあたっている不動産協会の野村正史・副理事長専務理事だ。

「建設資材の高騰に加え、慢性的な建設技能労働者の減少や働き方改革に伴う労務費の上昇で、建築費が高騰しています。また、マンションに適した開発用地が少なくなってきており、用地費も上がっています。そのように供給戸数が減少している一方で、若年世帯を中心に住宅取得意欲は依然として旺盛ですので、需要が集中するマンションでは希少性が高まり、価格の高騰につながっていると認識しています」(野村専務理事)

 マンション価格の先行きは「こうした需給の状況や経済情勢に変化がない限り価格が下落することは考えにくく」、当面は高い水準のまま推移すると考えているという。

投機目的のマンション購入は「ある」と認識しているものの…

 では、千代田区の要請の根拠となっている「投機目的のマンション購入増加」については、どのように考えているのだろうか。

「投機目的とみられるマンション購入は、実態としては『ある』と認識しています。ただ、そのような事例は、物件の立地や仕様など物件個別の特性によるもので、分譲マンション市場全体において数多く生じているものではないと考えています」(野村専務理事)

 その上で専務理事は、憲法の定める「財産権の保障」については、常に頭に置いておく必要があると指摘する。

「マンション価格の高騰は課題の一つだと思いますが、一方で不動産を取得した方が物件を売却する際になるべく高く売りたい、賃貸に出す際になるべく高く貸したいという当然の権利を制限することに繋がらないか。その点は慎重に考える必要があります。本来、財産権を制限するということは、非常に重たいものなのです」(同)

 協会としては、引き続き千代田区とコミュニケーションを取りつつ、投機目的のマンション購入に対してどのような手立てが可能なのか、あらためて見極めていく方針だという。

 マンション高騰は“投機”なのか、それとも“市場原理の範疇”なのか。守るべきは資産を持たない人の将来か、資産を持つ人の権利か――。千代田区の要請の裏には一言では片づけることのできない、複雑なテーマが横たわっているのである。

デイリー新潮編集部

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