「職場ダブル不倫」がバレて四者会談…「別れなければ上司に言う」 針の筵でも改心しない40歳夫のホンネ

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「四者会談」の結論は

 離婚はしない。彼女とは別れる。そうとしか言えなかった。だが翌日、芙美香さんから連絡をもらった孝太郎さんは、「きみとは別れたくない」と伝えた。

「そうこうしている間に、芙美香の夫が、話し合いたいと言ってきた。なにせみんな似たような職場です。不倫したほうもされたほうも、誰も表沙汰にはしたくない。4人で、ホテルの部屋に集まりました。誰もが黙っていて口火を切らない。恭子がため息をついて、『私はあなたたちが別れてくれれば、公にはしない。でもずっとこのままだったらあなたたちの上司に言う』と。すると芙美香の夫が『それは困る』と。サレた側も意見が一致しない。シタ側の芙美香と僕は言葉がでなかった。どうするつもりなのと聞かれても、答えようがなかった。とにかく、もう会わないと僕がはっきり言いました」

 ところが数日後、芙美香さんから連絡があり、「これが最後」と会うと、またずるずると会うようになった。時間がなくて、車の中で短時間の逢瀬をしたこともある。芙美香さんの体に包み込まれる感覚が、離れていても彼を麻薬のように襲う。

「夜中にこっそり家を抜け出して会ったりもしました。何をやってるんだろうと思うけどやめられない。自分が壊れていくような感覚があって、それに抗うのが生きている実感になっているような。不倫にはまる人って、たぶんはまっている感覚はないんですよ。だんだん怖くなって相手にしがみつくしかないような気になる。僕らの場合は、バレたら夫婦2組が世間から追われることになると思っていましたし」

「バレちゃってますから、罪悪感も背徳感もあまりない…」

 それから1年以上たっているが、状況は大きくは変わっていない。孝太郎さんと芙美香さんは、人目を忍んでときどき会っている。恭子さんは「どうなってるの、別れたわよね」と言い、芙美香さんの夫は恭子さんに「まだ別れてないと思う」と吹き込んでいるようだ。

「ときどきしか会えないけど、僕と芙美香の情熱は変わってない。でも芙美香も離婚するつもりはないらしい。僕もです。家にいるときは以前より家事もやっているから、離婚したら恭子も困るのかもしれません。妻は仕事が今、とても忙しいので、家事は僕のほうが負担が大きくなっている。夫婦の会話はあまりないけど、娘たちとはうまくやっているつもりです」

 芙美香さんの夫も非常に忙しくなったため、孝太郎さんと芙美香さんは一緒にいる時間が増えている。「悪いことをしている」という実感は薄く、「うまく綱渡りをしている」という感覚らしい。渦中にいる人は俯瞰で見るのがむずかしい。もともと恋愛だから、善悪で判断することはできないとしても、パートナーへの罪悪感はないのだろうか。

「パートナーにはもうバレちゃってますから、罪悪感も背徳感もあまりない。バレているのに別れられない、別れたくない自分の気持ちをどうしたらいいか。職場関係には知られないようにしなくてはということも考えますね」

 冷静なようで冷静ではないのが恋している当事者だ。いろいろな言い訳をつけて、結局は自分の恋心を優先させてしまう。

「妻はときどき、射るような目で僕を睨んできます。妻とはもちろん、子どもをなした仲だし、家庭を共同で築いている関係でもあるけど、愛おしさとか心から大切な人だと思う気持ちが、以前からわいてこないんですよ。愛や情熱とは無縁のところで、妻と僕の関係があるような気がするんです」

 身勝手な言い分ですよね、本当はわかっているんですと、彼は下を向いて首を振った。こういうことではいけないとわかっているのに、素直に反省の弁すら出てこない自分を、どこか恥じているようにも見えた。

 妻の恭子さんに対しては、どこか冷めた様子を見せる孝太郎さん。それには、かつての妻の暴君じみた態度が尾を引いているのかもしれない……。【記事前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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