「ダメ、やり直して」妻の監視下でトイレ掃除をさせられる… “家庭内暴君”に疲れた40歳夫が見つけた救い

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【前後編の前編/後編を読む】「職場ダブル不倫」がバレて四者会談…「別れなければ上司に言う」 針の筵でも改心しない40歳夫のホンネ

 既婚者同士の恋愛の場合、どちらかの配偶者に露見すれば、多くのケースでは恋は終わる。その後の夫婦関係がどうなるかは千差万別だが、恋愛は少なくともほとぼりが冷めるのを待つことが多い。そのうちに情熱も冷めていくものなのだが、そうではなく泥沼化していく関係もある。

「僕がそうですね。大きな声では言えないけど、僕の不倫が原因で、この1年くらいずっと泥沼状態なんです。うちの夫婦も彼女の夫婦も……」

 戸川孝太郎さん(40歳・仮名=以下同)は恥じたように俯き加減で言った。ときどき夫婦2組が集まって協議が開かれているが、一向に進展しない。離婚も、恋愛関係にあるふたりの別離も実現されないまま、事態は2年目に突入している。

妻の前でトイレ掃除を「やり直し」

 そもそも孝太郎さんが、相手の女性・芙美香さんに惹かれたのは職場が同じだったから。実は各夫婦4人は、みな同じ教育関係の仕事に就いている。だからこそ「マズい」と全員が思っているのに、それゆえに表面化させることもできずにいるのだ。

「僕が結婚したのは30歳のとき。同じ職場に異動してきた2歳下の恭子と気が合い、交際半年で結婚しました。あまり長くつきあっていて噂になるよりは早めに結婚したほうがいいと思った。すぐに子どもができて長女が、年子で次女が生まれました。産休を考えたら、年子で生んでしまいたいと妻が言ったため、そうしました」

 恭子さんとは夫婦仲も悪くはなかった。ただ、彼女はとにかく気が強い。おとなしい孝太郎さんは、彼女の激しさについていけないところがあった。

「家庭内でのすべてのことを指図するんです、あれこれ。僕も大学入学以来、ずっとひとり暮らしなので、とりあえず家事はできる。恭子は、家事分担などを書いた紙を冷蔵庫に貼り、『トイレ掃除した? お風呂は?』とチェックを入れる。実際、トイレを見に行って、『あんなんじゃダメ、やり直して』と。彼女が見ている前で掃除のやり直しをさせられる。なんだかオレはきみに雇われている家政夫みたいだなと言ったら、『家政夫ならプロだから、もっといい仕事すると思うけど』と。彼女はユーモアのつもりで言ってるんでしょうけど、こちらの皮肉にそういうユーモアで返すのは、僕の趣味ではなかった」

恭子さんの育った家庭

 家庭は妻の言うとおりにしていればうまく回る。先輩たちはそう言ったし、結婚するとき、父親にまでそう言われた。ただ、孝太郎さんの母は天性の明るさをもっていて、夫にも子どもたちにも無体なことは言わなかったし、母の愛されキャラがあったからこそ家族はうまくいっていたのだと、今の孝太郎さんにはよくわかる。

「恭子の育った家庭は、母親が父親の言いなりだったみたいです。その分、母は恭子にすべてを託したようなところがある。彼女は母親の過干渉と強いキャリア志向を押しつけられながらも、努力を重ねてすべてクリアしていった。職業だって、本当は教育関係には就きたくなかったとつぶやいていたことがありました。洋服が好きだからファッション業界に行きたかったらしいです。新婚当初、そんな愚痴をあまりに言うので、『だけど受け入れて、母親の希望を叶えようとしたのは恭子本人でしょ』と軽く言ったら、ものすごく怒られました。あなたは全然、私を理解しようとしないって金切り声を上げられたので、僕のほうがビビってしまった。その後、平静を取り戻して謝ってきましたが。金切り声を上げる女性とつきあったことがなかったので、あれは驚きましたね。その後もたびたび同じような状況になりましたが。何かあると『落ち着け、深呼吸』と妻に叫ぶのが僕の習慣になっています」

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