「ダメ、やり直して」妻の監視下でトイレ掃除をさせられる… “家庭内暴君”に疲れた40歳夫が見つけた救い

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芙美香さんの「悩み」とは

 そんな日々が続いて、とうとうふたりは関係を持ってしまう。男と女は何があるかわからない。彼女のセンシティブな問題の内容は、夫婦のレスだった。自分に性的な魅力がないからだ、女として失格だ、もう終わりだと嘆く彼女に、自信を取り戻してもらうには、孝太郎さんが身をもって示すしかなかった。現実的に考えれば、それはやはりあくまで「不倫」でしかないのだが、彼のその瞬間の気持ちもわからないではない。それで彼女の心が少しでも和らぐなら、「身を挺して役に立ちたい」と彼は純粋に思ったのだろう。

「まあ、そのころはうちもレスでしたから、僕が欲求から離れたところで行動したわけではない。そもそも欲求がなければ、そういう行動には及ばないわけだし。なんとかしてあげたい気持ちもあったけど、僕は正直に言えば、芙美香に女として魅力を感じたんです。今さら嘘をついてもしかたがない」

 彼はあっさりと彼女への恋心を認めた。恋心が先か性的欲求が先かは、本人もわからないという。

「始まってしまった」

「少し離れた町のホテルまで行って、そういう関係をもちました。帰りはふたりとも黙りこくっちゃって。ホテル前で別々の方向に行こうと決めたとき、彼女が『もう会えないの?』と彼女が泣いたんですよ。会いたいよ、会いたいに決まってると言いました。そのときはそう言ったけど、現実を考えると会わないほうがいいに決まってるわけで……。でも会いたいに決まっていると言った自分の言葉が頭の中にこだましていた。ああ、オレはずっと彼女のことが好きだったんだと思った。そのときは本当にそう思ったんです」

 恋の始まりの多くは思い込みと錯覚なのかもしれない。お互いの心や状況のタイミングがすんなり合うと、「運命の恋」と思ってしまうこともある。

「始まってしまったとは思ったけど、それがそんなに大ごとになるとは当時の僕は思っていなかった」

 孝太郎さんはしんみりとそう言った。

 恭子さんの強権的な態度が落ち着いた矢先に、訪れた芙美香さんとの出会い……。【記事後編】では、彼女の夫も巻き込んだ「四者会談」が開かれるようになったいきさつを紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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