「買えるのは中古だけ」時代のマンション選び 築年、平米よりも重要な「新基準」とは【“沸騰”不動産の対処術】
大事なのは“嫌われる勇気”
マンションの管理方式については、最近増えている「外部管理者方式」にも注意が必要だという。マンションの管理組合が、従来の区分所有者による理事会運営に代わり、管理会社を含めた外部に管理者業務を委託する方式で、デベロッパーの関連会社が指名されるケースも多い。
「外部管理者方式は、もともとは役員の成り手不足を補ったり、住民の高齢化に対応したりするために広がった仕組みです。しかし、近ごろは都心部を中心に、現役バリバリで働いていてマンション管理にまで手の回らない住人に対する“サービス”として提供しているケースが増えていますね」(山本氏)
しかし、外部管理者はあくまでも物件とは関係ないいわば他人。業務が管理者契約している範囲内に留まってしまい、100点満点の管理を求めるのは難しくなるという。
「その結果、良くて70点、悪いと50点ぐらいの管理状態になってしまうことも。必要以上に修繕計画の費用を水増しするといった利益相反が起きやすい構造も問題視されています」(同)
利益相反については、国もワーキンググループを作って対策に取り組んでいるが、今後も付きまとう課題となりそうだ。では、外部管理者方式のマンションの住人が取り得る対策は、なにかあるのだろうか。
「“監事”が管理者の業務執行や会計状況を監査する役割をしっかりと機能させることが、外部管理者方式を有効活用していく上で非常に重要になります。ただ所有者が監事になったとしても、建物の維持管理や会計などの専門的知識を持ち合わせているケースは稀ですので、外部アドバイザーの起用なども有効な手段になってきます」(同)
ちなみに、区分所有者総数と議決権総数それぞれの3/4以上の承認を得れば、管理規約を変更し外部管理方式を解除することも可能だが、実際にはそれほど簡単な手続きではない。それでは、50点や70点の管理状態を改善するにはどのような方法があるのだろうか。
「私はマンション管理において非常に大事なキーワードは“嫌われる勇気”だと思っています。結局は誰かが手を挙げて問題提起しないと管理状況は改善されません。そうした声が1人、2人、3人と増えていけば、外部管理者や管理会社も対応を考えざるを得ません。“マンション管理は1日にしてならず”という言葉に代表されるように、管理状況の改善は長いスパンで見る必要があります」(同)
せっかく「外部管理者方式」なのに、手間がかかってしまうのは困るという人もいそうではあるが――。
「管理状況に不満があるとしたら、今からでも取り組まないと、もし5年後に自分がマンションを売却しようとなった際に、思ったような価格で売れないという事態にもなりかねません。嫌われる勇気を持って思ったことをちゃんと意見し、草の根的に活動していくことが、マンション管理においては非常に重要なのです」
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〈【【“沸騰”不動産の対処術】都内で北千住・浅草が急上昇の謎…「の」の字の法則で読み解く値上がりエリアの「実名」と不動産選びの「新常識」】では、都内の不動産価格で起きている“西低東高”の傾向について、不動産業界で受け継がれる“ある定説”を元にした深読み解説をお届けする。不動産“沸騰”時代の住まい選びに欠かせない“新常識”とは――。〉
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