「買えるのは中古だけ」時代のマンション選び 築年、平米よりも重要な「新基準」とは【“沸騰”不動産の対処術】
「もう普通のサラリーマンが新築マンションを買える時代でない」と言われ久しい。実際、不動産経済研究所が発表した、2025年上半期の東京23区の新築マンションの平均価格は1億3064万円。年収2000万円で何とかローンの審査が通るかどうか、という水準だ。こうした状況下で“新築信仰”の強い日本でも、“築浅中古”や“駅近中古”のマンション購入を視野に入れる人が急増している。その際に「見落としがちな点」があるという――。
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主要都市への人口集中が続く
そもそもなぜ、東京都心で不動産価格の高騰が収まる気配がないのだろうか。
「少子高齢化で住宅需要が減少し、不動産価格が値下がりしていく、という見方は日本全体で見れば当てはまるかもしれませんが、都心や主要都市ではむしろ、人口減少が住宅価格を押し上げる要因になり得ることがあるのです」
そう解説するのは、不動産コンサルティング事業を展開する「株式会社さくら事務所」の山本直彌氏だ。
「人口減少の局面で、過疎地など人の少ない地域ではだんだんと生活に必要なインフラが提供されないようになり、居住自体が難しくなるところが出てきます。すると何が起きるかと言うと、医療や教育、スーパーマーケットなど生活インフラの集約された主要都市に人口が集中していくのです」(山本氏)
中には、将来的にはAIやIoTなどの先端技術を用い、都市インフラを効率的に管理した「スマートシティ」に人口が集中し、それ以外の場所ではほとんど人が住まなくなるという未来を描く専門家もいるそうだ。
「それはまだまだ未来の話ですが、主要都市への人口集中は既に始まっています。その際たるものが東京の都心部ということです。新しい駅ができるとか、新しい路線が通るとか、そうしたことが起きない限り、立地の条件は変わりません。さらに都心への人口集中が進む中で、絶対数の限られた都市部の物件を人々が奪い合う形になるため、今後も不動産価格が維持向上する可能性が高いのです」(同)
新築マンションの供給量はますます先細り…
都内にある未開発の土地は既に皆無に等しく、新築マンションの多くは古い建物を壊しての建て替えがほとんどだ。
「用地取得費や建材費の高騰に加え、解体や建築には人件費の高騰が影響し、マンション建築費用は高くなる一方です。そのため、デベロッパーが新築マンションの販売で利益を確保するためには、販売価格を値上げするしかありません」(山本氏)
その結果、最近は共用部の仕様を極力シンプルにしたり、60平米台の3LDKが増えたり、なんとか販売価格を抑えようと、デベロッパーの苦肉の策が続いている。
「仕様がすごく良いわけでもなく、専有面積も少し狭い。そんな物件を“新築”という理由だけで買う必要があるだろうか、と考える人が増えたことで最近は築10年以下の“築浅中古”の需要が急増しているのです」(同)
むしろ、ひと昔まえの物件の方が、共用部の仕様がしっかりしていて、居住スペースも広々しているケースも多いという。
「今後、新築マンションの供給量はますます先細りしていくと見られています。欧米のように、日本でも住宅を購入する際に中古物件が中心になる“ストック型”のマーケットに移行していくでしょう」(同)
ただ、移行期ゆえに「立地」や「築年数」、「平米数」や「設備」といった情報に隠れてしまい、重要なポイントが見落とされているという――。
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