「買えるのは中古だけ」時代のマンション選び 築年、平米よりも重要な「新基準」とは【“沸騰”不動産の対処術】
マンション市場は今後「ストック型」に移行へ
「それが“管理状態”です。マンション市場がストック型のマーケットに移行していく中で、立地や築年数と合わせ、マンション管理が重要なファクターになる時代がやってきます」(山本氏)
例えば、立地や間取りが気に入って、購入を検討する物件があったとする。内見の日が決まり胸を躍らせ現地に行くと、共用部の廊下にはゴミが落ちていて、エレベーター内も見るからに古い…。そんな物件は避けるべきなのかもしれない。
「そのマンション全体がどれだけちゃんとメンテナンスされ、管理されてきたかということは、実は将来の資産価値に直結するのです。中古物件の市況が活発化するにつれ、管理状態に対する相対評価はますます重要になるでしょう」(同)
ただし、不動産管理は目に見えるハード面だけでなく、ソフト面も重要なのだという。
「実は、マンション管理の本質は、見た目の美しさや設備の状態といったハード面よりも、組織運営や財政状況などのソフト面にあるのです。なぜかと言えば、管理不行き届きが結果として目に見えるのはハード面ですが、それを顕在化させるのはソフト面にあるからです」(同)
ソフト面において重要な要素が「お金」だという。
「特に重要なのが修繕積立金です。仮に同じ1億円積み立てられている状態であっても、来年に大規模修繕工事を控え、なくなる予定である1億円と、売買の前年に大規模修繕工事が済んでいて、それでも1億円の残高がある状態では話が全然違ってきます。大事なのは、管理会社・管理組合として長期修繕計画をしっかり作成し、それを5年に1回の物価変動なども含めて適切に見直しを行えているかどうか。長期修繕計画上で資金不足に陥っているマンションは将来的に売却の“足枷”となる可能性があります」(同)
しかし、SUUMOなどの不動産ポータルサイトを見るだけでは、長期修繕計画の内容まで確認することはできない。
「買い主が自ら“見せてほしい”と言うしかありませんが、現状では開示義務がないため、見せてくれるように粘り強く交渉する、または管理の重要性を理解している仲介業者に依頼するしかありません。例えば購入時には修繕積立金が月額1万円でも、長期修繕計画上の資金計画において購入から10年後に月額4万円になる予定がある場合、10年後の時点でその物件の流動性がガクンと下がる可能性があるのです」(同)
長期修繕計画は行政による標準となる“ひな型”があるが、実際はマンションの管理会社がそれぞれ独自に作っていて、様式もそれぞれ異なるという。また、中古マンションの販売を手掛ける仲介業者が修繕計画の内容までケアすることは難しいようだ。
「不動産の知識だけではダメで、建築や設備に関する知識も備える必要がある。不動産の仲介営業の方にそこまで求めるのは酷でしょうから、買い手が見定めるしかありません。最近は購入を検討する中古マンションの修繕計画の妥当性について、アドバイスして欲しいという相談も増えています」(同)
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