宇治、大洗、金沢、沼津…ファンなら誰もが知っている“共通点”とは? まんだらけ「川代浩志」経理本部長が語る“聖地巡礼”の魅力
日本を代表する漫画専門古書店にして、コレクターズショップの「まんだらけ」が、9月1日~7日にかけて大々的な「京都アニメーション(以下、京アニ)」作品の書籍やグッズを中心としたオークションを開催する。8月1日に発売されたオークションのカタログ「まんだらけZENBU」は、貴重な商品がずらりと紹介され、圧巻である。
そんなオークションを開催するまんだらけで、経理本部長を務めるのが川代浩志氏である。川代氏は京アニ作品の熱狂的なファンとして知られるだけでなく、休日となればアニメの聖地巡礼のために全国を飛び回っているという。川代氏に聖地巡礼、特に京アニ作品の聖地の魅力について話を聞いた。【取材・文=山内貴範】(全2回のうち第2回)
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地元の人から話を聞くのが好き
――川代さんがアニメの聖地巡礼を行う理由はなんでしょうか。
川代:やはり、アニメの舞台になった場所を見てみたいという、純粋な気持ちが強いためですね。そして、私はどこかに行くたびに、観光協会や地元のお店の人からいろいろ話を聞くのが好きなのです。アニメの関係者がどう取材にお見えになって、どんなロケーションを気に入ったのかといった、そんな裏話を聞くのが楽しいですね。
――現地でしか知り得ない情報も多いですよね。
川代:個人的に思い出深いのは、聖地巡礼がブームになり始めた頃に制作された、千葉県鴨川市が舞台の「輪廻のラグランジェ」です。放映時にはかなりネットで叩かれました。確かに、「鴨川ロリータ」のように、各話のタイトルになんでも“鴨川”と入れるのはちょっとどうかなと思いましたが(笑)、作品の内容は悪くないし、ロボットのデザインも変形の様子も秀逸で、面白いと思って見ていました。
放送終了後、10年以上経っても巡礼する人はいる
――川代さんのなかで評価は高かったのですね。
川代:面白いアニメだったので、何はともあれ実際に鴨川に行ってみようと思い立ち、現地の人たちに話を聞いてみました。すると、「こんなに騒ぎになっている理由がわからない」という人が多かった。一方で、「どういった形でも街が取り上げられて、人が多数来てくれるのはありがたい」と話される方もいました。
放送から10年経ち、アニメの資料が鴨川市に寄贈されました。僕は仕事で行けなかったのですが、その資料の整理をファンの間でやろうという取り組みがありました。そして、周年ごとに現地で展示会を行っています。ところが、この作品が語られる際はどうしても炎上の話題ばかりで、熱心なファンが存在することや、作品が町に根付いていることはほとんど報道されないのです。
少し前に、久しぶりに鴨川を歩いて回りました。町を歩いていると、お互い顔見知りのファン同士で会うこともできました。放送が終わってからも作品を愛している人はいますし、そんな人たちは今も鴨川を訪れているのです。地元でこの作品が継承されていくといいですし、純粋に内容が面白いので、もっと注目されてもいいアニメだと思います。
個人的には、放送中にアンチが多い作品の方が、長い目で見れば残るのかもしれない、と思っています。どんなに周りに叩かれようとも、「そんなにひどい作品じゃないよ」「私はそれでもこの作品が好きだ」という人たちからは、一種の結束力を感じます。聖地巡りをしていると、そういった熱心なファンに会うことができるのも魅力ですね。
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