宇治、大洗、金沢、沼津…ファンなら誰もが知っている“共通点”とは? まんだらけ「川代浩志」経理本部長が語る“聖地巡礼”の魅力
京アニ作品の聖地巡礼
――聖地巡礼をブームにしたのは、京アニが制作した「らき☆すた」です。
川代:私は数々のアニメを見て、聖地巡礼をしてきましたが、京アニさんとP.A.WORKSさんの2社が突出して、舞台を正確かつ精密に描いていると思います。もちろん他社も素晴らしいのですが、自分としてはこの2社は抜きんでていると感じますね。
私が聖地巡礼にどっぷりハマったきっかけは、京アニさんの「響け!ユーフォニアム」です。京都府宇治市などの風景が情緒豊かに描かれているのですが、京アニさんの凄さを感じました。ワンカットだったのですが、電信柱の変圧器が映る瞬間がありました。まさかこれと同じものはないだろうと実物を探してみたら、本当にあったのです。
道行く人からは、常に電信柱を見上げている変な奴と思われたと思いますが、配線などの様子を見て、絶対これで間違いないと確信しました。正確性に驚いたし、何気ないカットでもしっかりロケハンして丁寧に描いている京アニってスゴイ、本当にこだわっているなあと思いました。感激しましたよ。
「響け!ユーフォニアム」の黄前久美子ちゃんのマンションを探していた時は、マンション前の交差点は間違いなくここだけれど建物がないなと思っていたら、後からマンションだけは合成だということがわかりました。いろいろなことがありますが、現地で推理しながら、歩き回るのは楽しいんです。
――川代さんは現地を歩いて回っているのですか。
川代:はい。基本的に徒歩ですね。レンタサイクルで回れる聖地も多いですが、走っている途中に見逃したくないので、徒歩が一番いいんですよ。私はアニメの画像をプリントした紙を大量に持ちながら歩いています。現地に行けば、このアングルから撮っているんだなあと、関係者のこだわりを実感できるのです。
聖地巡礼をしている方のSNSを参考にすることもありますが、情報が出ていない場合もあります。そんなときは、とにかく現地を歩いて回ります。夏場は汗だくになりますが、丁寧に探していけばモデルになった場所が見つかることは多いですし、自力で発見したときの喜びは格別ですね。
大洗でゴミ袋を買った理由
――川代さんは自宅に、聖地で購入した大量のグッズをお持ちだそうですね。
川代:作品に関わるグッズが欲しいだけでなく、「地元にお金を落とす」と言うと失礼かもしれませんが、“地元ならではの何か”を買いたいのです。「ガールズ&パンツァー」は、放送中に聖地の茨城県大洗に行きました。現地に行ってわかったのは、茨城ではまだアニメが放送されていなかったため、町の方が作品をご存じではなく、グッズもほぼなかったのです。
せっかく来たので、“大洗”と大きく書かれた“町指定のゴミ袋”を雑貨屋さんで買いました。とにかく、大洗という文字が大きく出ているのが魅力でした。雑貨屋さんからは「大洗に住んでいる人じゃないのにどうして」と言われましたが、よくよく話を聞いてみると、私と同じ発想したファンがいて、その方もゴミ袋を買い求めていったそうです(笑)。
ちなみに、大洗駅からアクアワールド茨城県大洗水族館まで、数キロを歩いたんですよ。本当に遠かったし、「歩く人は俺だけだよな」と思っていました。すると、その後の話で、私が歩いた場所がアニメに登場したんですよ。放送途中に行ってよかったと思いましたし、大洗という町が凄く好きになってしまい、その後も何度も通いました。
――川代さんの熱量を感じます。
川代:その後、作品の人気がどんどん出て、聖地巡礼を行う人も増えました。特に、作品とコラボした「あんこう祭り」が開催されたあたりから急激に大洗を訪れる人が増え、最高潮の時は、町民をはるかに上回る人が訪れたようです。「あんこう祭り」の開催中にも行きましたが、道を歩けないほどでした。
でも、何度も現地に行っている人が有利なのは、裏道を知り尽くしているので、早く移動できるのです。特権のようなものですね。僕は歩くのが好きですし、何度も通っていると同じ道ばかり歩いているのは面白くないので、地元の方の迷惑にならないよう、道を変えて歩いています。土地勘がついてくると、聖地がますます魅力的に感じられるんですよ。
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