連続幼女誘拐殺人事件「宮崎勤」を追い詰めた“執念の捜査”…シリアルキラーの車から見つかった「決定的な証拠」とは

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別件で逮捕された男

 6月11日。飯能市内の霊園に墓参りにきた会社員が、何も着ていない幼女の胴体部分の遺体を発見、飯能警察署に届け出た。同署には、Cちゃんの「誘拐殺人合同捜査本部」が設置されていた。何も着ていない幼女の遺体――Cちゃん事件との共通項もあり、すぐに遺体の司法解剖が行われ、行方不明になっていたDちゃんとの照合も行われた。翌12日、遺体はDちゃんと断定された。

 一連の事件の犯人が東京へ進出した……。捜査はより大規模な展開を見せる。

〈警察庁の指導調整により、栃木、茨城、群馬、神奈川、警視庁の各警察から、事件の主要舞台となっている埼玉県警へ三次にわたり応援部隊が派遣された。警視庁と埼玉県警では、遺留品捜査、前歴者捜査、地取り捜査等を推進したが、犯人に直結する情報の入手には至らず、捜査は長期化した〉(警察庁の教養資料より)

「少女対象の誘拐、わいせつ事案は、必ず深川特捜本部との関連を追及せよ」

 警視庁管内98署(当時)に刑事部長名の内部通達が出され、類似事件への捜査が徹底された。その結果、被疑者検挙が相次いだものの、本丸の被疑者逮捕には至らなかった。だが、組織として警察が総力を挙げている時、犯人が動けば必ずその網の中にかかる――宮崎死刑囚はそのセオリーを無視してしまう。

 Dちゃんの遺体発見から1か月半後の7月23日、八王子市内で幼女に対する強制わいせつ事件の被疑者として一人の男が逮捕された。午後4時35分ごろ、9歳と6歳の姉妹が遊んでいた公園に男が現れ「写真を撮らせて」と近づいた。不審に思った姉が父親に連絡するためにその場を逃げたが、男は妹を連れ出し、約10メートル離れた沢辺で「水着に着替えて」などといって、何も着ていない妹の写真を撮影した。姉からの通報を受けた父親が現場に駆け付け、逃げる男を追跡し、車に乗って逃げようとしたところを捕まえた。この男こそ、宮崎勤死刑囚だった。犯行現場は、AちゃんとBちゃんを殺害した現場の近くだった。

 幼女が関連する事件はどんな些細な事案でも深川特捜へ連絡――八王子署から検挙報が届いたのは翌24日、その翌日には特捜本部から捜査第一課員が八王子署に出向いている。しかし、捜査員の最初の感想は「どちらかというと、違うのではないか」だったという。

 まず、宮崎死刑囚の乗っていた車が日産ラングレーだったこと。【第1回】でも紹介したが、埼玉県警はカローラII、警視庁は黒のプレリュードを犯人が使用した車と見て、集中捜査していた。また、宮崎死刑囚の自宅と、Dちゃん事件の現場は、同じ東京都といっても距離がある。さらに、現場周辺の駐車車両約2100台、そして付近を走る高速道路のNシステムの解析から車両捜査を展開しているが、宮崎死刑囚の車はヒットしない(後の捜査で、同死刑囚は高速代でビデオを買いたかったので、一般道を走って現場に向かったと供述)。

〈手口・生活環境等の検討から、一連の幼女誘拐殺人事件との関連性を重視し、警視庁捜査第一課員の応援を受けて、自宅等の捜索を実施した。その結果、被疑者(注・宮崎死刑囚)が使用していた車両のトランク内でルミノール反応があったため、より慎重な取り調べを継続した〉(前出・資料)

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