なぜトランプ大統領は「ハーバード大学」を攻撃するのか 「慰安婦論文」ラムザイヤー教授が明かす「ハーバードの不都合な真実」

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“共和党支持”の教員

 もっとも人種に関しては、論文の引用数やテストの成績など、客観的で標準化された指標を用いることで、ある程度の評価が可能である。しかし、政治的傾向については事情が異なる。言論の自由に抵触するおそれがあるため、評価や判断がはるかに難しく、野放し状態になっている。

 このために厄介な問題が生じた。

 仮にハーバード大学が、人文学部に共和党支持の教員を採用することにしたとしよう。だがそれは事実上不可能なのである。そのような人材が大学院にほとんどいないからだ。

 考えてみてほしい。人類学の博士課程を修了するということは、大学の教員になるための訓練を受けたということだ。しかし人文系の世界は極めて左傾化しており、どの大学も保守的な候補者を採用しようとはしない。もしあなたが学部生で保守的な価値観を持っていたら、人類学の大学院に進もうとは思わないだろう。その先がないのだから。つまり、構造的に保守的な人材が育たない仕組みになってしまっているのだ。

 私の知るあるハーバード大の学生は、文学の必修科目で「父親から虐待をうけるレズビアンが主人公の漫画」を課題として与えられ、それについてタームペーパー(期末レポート)を書くよう求められたという。常識ある学生なら、こうした課題に強い違和感を覚え、学問への信頼さえ揺らぐのではないだろうか。

 これはハーバード大だけの話ではない。各地の人文系学部では、民主党を支持するリベラル派の教授が圧倒的多数を占めている。最新のある研究によれば、カリフォルニア大学バークレー校の歴史学科では、民主党支持者が31人に対し、共和党支持者はわずか1人。スタンフォード大学では22対0。この数字が示すように、完全なイデオロギーの偏りが存在する。

 このような状況下で、保守的な価値観を持つ学生は人文学を敬遠する傾向が強まり、今や米国で歴史学を専攻する学生は全体の1%にも満たないというのが現実なのである。

アメリカにおける人文学の衰退

 アメリカの人文系学部が常に衰えていたわけではない。かつてはみな、ドストエフスキーやジェーン・エアといった文学を読み耽ったものだ。いまや、それらはほとんど読まれていない。少なくとも、そうした古典文学や名著だけを読む学生は、もはや見当たらない。実のところ、ハーバード大学にシェイクスピアの講義がまだ存在するのかどうかもわからない。

 4年前、私が慰安婦問題に関する論文を発表し、激しい攻撃を受けた背景にも、このアメリカにおける人文学の衰退という構造的問題があった。

 わずか8ページの論文が、想像を超える激しい反発を引き起こすとは、私自身予想もしていなかった。欧米大学のいわゆる日本専門家らは、私の論文の撤回を要求し、大学による私への処罰まで主張した。慰安婦問題における「性奴隷説」や「強制連行説」は、彼らのイデオロギーにとって不可欠な要素であるらしい。自らの立場を守るため、異なる視点を封殺しようとする姿勢は、「学問の自由」そのものに対する暴力である。

 とりわけ、日本語の一次資料や膨大な二次研究に目を通せば、慰安婦問題をめぐる歴史の全体像は明確に見えてくる。しかし、それらの多くは英語に訳されておらず、英語圏の研究者にはアクセスできないのが現状だ。その結果、アメリカの日本研究者たちは、この問題について驚くほど無知だ。吉田清治の名前すら知らない者までいる。

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