「習近平政権」の今後を占う「4中全会」はなぜ“10月開催”となったか…背景に激化する“権力闘争”、軍幹部が相次いで“失脚”する異常事態も

国際 中国

  • ブックマーク

 中国共産党中央政治局は7月30日、北京で10月に第20期中央委員会第4回総会(4中全会)を開催すると決定した。日本でも新聞社やテレビ局がすぐ報じたが、一部のメディアは8月末に開かれる見通しを伝えていたことをご存知だろうか。実は4中全会は8月から10月に“延期”された可能性があり、その背景として習近平国家主席の権力基盤が揺らいでいることを挙げる専門家もいるのだ。(全2回の第1回)

 ***

 担当記者は「中国共産党の最高決定機関は党大会です。ところが党大会の開催は大変な準備が必要なこともあり、5年に1回しか開かないのです」と言う。

「とはいえ5年間、何もしないというわけにもいきません。そこで5年間に7回、党大会で選出された中央委員会の全体会議を開催し、重要な課題について議論を行ったり、決定を下したりします。例えば1中全会は共産党の執行部人事を、2中全会は政府の人事を決めるという具合です。そして今年は4中全会が開かれる年にあたり、当初は8月に開催されるという観測が流れていました。ところが、それが10月に決まったと発表されたわけです」

 田中三郎氏は中国軍事問題の研究家として知られ、月刊誌『軍事研究』に発表する論文は常に高い評価を受けている。田中氏は防衛大学校から陸上自衛隊に進み、一貫して中国人民解放軍の調査、研究を積み重ねてきた。中国の専門家だけあり、自衛隊から外務省に出向した経験も持つ。

 その田中氏は「中国共産党の中では習氏が率いる“習派”と、それに逆らう“反習派”による権力闘争が激しさを増しており、そのため8月に4中全会を開くことができなかったと考えていいでしょう」と指摘する。

相次ぐ幹部の失脚

「中国は経済の低迷に苦しめられています。しかし習氏は台湾への軍事侵攻を明言し、その準備を進めるよう指示しています。そのため共産党内では習氏の軍事方針に反対する声が日増しに高まっているのです。反習派は『経済が弱体しているのに台湾侵攻など考えられない。アメリカとの軍事衝突に発展すれば中国は深刻なダメージを受け、中国共産党が崩壊してしまう』と危機感を募らせ、反習近平の包囲網を構築しようとしています。習派と反習派の暗闘を読み解く鍵の一つが人民解放軍の人事です。近年になって異常な事態が相次いで起きているのです」(同・田中氏)

 2023年8月29日を最後に、李尚福・国防相が突然、公の席から姿を消した。現在に至るまで動静は不明のままであり、24年6月に党籍を剥奪された。

 2024年11月には、解放軍の最高指導機関である中央軍事委員会の苗華委員に対し、汚職疑惑で調査が行われていることが判明。中国国防省が突然、苗氏に関して「共産党中央が職務停止を決めた」と発表した。

 今年に入ると、解放軍制服組のトップである何衛東・軍事委副主席の動向が3月中旬から急に途絶えた。現在は失脚が確実視されており、アメリカの一部メディアは粛清説を報じている。

次ページ:中央軍事委員会の欠員

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。