謎多き犯罪グループ「トクリュウ」に“決定的な弱点”…元ヤクザが明かす「民家より詐欺グループを襲うほうが簡単だった」の意味

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強固な組織力を持たないトクリュウ

 その存在がある特定の範囲の人々の間でだけ認識され、グループの輪郭すらつかみにくいトクリュウは完全な「非公然組織」だ。誰がメンバーであるかはグループ内ですら秘密にされているケースもある。ネットの匿名空間に隠れ、捜査の端緒すら容易につかませない。

 しかし実は、トクリュウはその最大の武器とも言える“匿名性”をはぎ取られると、非常に弱い面がある。

 特殊詐欺がまだ「オレオレ詐欺」と呼ばれていた十数年前、詐欺グループを「狩る」ことを生業としていた元ヤクザから話を聞いた。その元ヤクザは、複数の窃盗事件や強盗事件に「情報屋」として関与した前科があった。金庫などに現金を貯えた民家や事業所の情報を入手して犯行グループに提供し、分け前を受け取っていたのだ。

 彼に言わせれば、「むしろ詐欺グループを襲う方が簡単だった」という。

「羽振りよく飲んでいる悪い連中がいれば、そういう噂は自然と広まるものなんです。ヤツらは警察の手が伸びてこないからと、自分たちの秘匿性を過信していた。私はリーダーを尾行して身辺を徹底的に調べ、ターゲットが部屋でひとりでいるところを単独で襲いました。たとえばマンションの地下駐車場で、ターゲットの隣のスペースにとめられた車の下に潜り込み、帰宅を待つんです。相手が車を降りたら飛び出して、催涙スプレーを顔面に吹きかけてやった。それで腕をねじり上げてやれば、あとは従順ですよ。部屋に案内させ、積み上がった現ナマをいただきました」

 襲われた詐欺犯は、悪事の発覚を恐れて通報することはできない。それよりは「また詐欺で稼げばいい」という損得勘定も働いたかもしれない。

 トクリュウの組織は、ヤクザほどには強力ではない。だから「犯罪収益を貯め込んでいる」と周囲に知れれば、自らが獲物に転じてしまうリスクが高まるのである。

 実際、この手の話は特殊詐欺や闇金融の経験者や周辺者から何度も聞かされた。少なくない特殊詐欺犯が海外に拠点を構えるようになったのは、警察の捜査が及びにくくするのと同時に、こうした襲撃リスクを警戒してのことではなかったかと、個人的には考えている。

 もっとも、海外に移ったからといって安全とは限らない。

 一時、ルフィグループの「黒幕」のように報じられていた在フィリピンの日本人犯罪グループ「JPドラゴン」。そのリーダーである吉岡竜司容疑者(55=特殊詐欺で窃盗容疑、フィリピンで現地当局が拘束中)は、「セットアップ」と呼ばれる犯罪手法で悪名をとどろかせていた。

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