「ゆっくり振られる手が見えた」生存者を発見した消防団員、マスコミの殺到を予測した球団社長夫人…「日航機事故」関係者と遺族の“長い一日”

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ゆっくり振られていた女性の手

 消防団の今井興雄さん(36)もテレビの画面を見て墜落現場が御巣鷹山付近だと確信して、いよいよこれは招集がかかるなと覚悟を決めた。

「午前6時ごろには待機命令が出て、6時20分には上野中学の校庭に集合がかかりました」

 すぐさま御巣鷹山を目ざして出発し、現場に着いたのが午前10時半ころ。そのあまりの惨状にしばらくは茫然と座っているだけだったというが、彼の目前でさらに信じられないことが起こったのである。

「目の前のガレキが動いたのに副団長が気づき、猟の経験のある私に“テンやキツネが人間の肉を食いに出てくるかな”と聞きました。私が“そんなキツネやテンは日本にゃいねえ”と言っている間に、またスクラップが動く。こりゃおかしいと、我々が立ち上った途端、女の人の手がゆっくり振られるのが見えて、生存者がいることが分かった。……もうみんなで興奮しちゃって大変でした。そして彼女たちの救出のため尾根まで、400メートル登る距離が、あんなに長いと思ったことはなかったですよ」

2人が最後まで一緒だったことが何よりの救い

 搭乗者名簿にはさまざまな目的で日本を訪れていた外国人の名前もあった。インドのニューデリー市内に住むインド国籍の41歳男性とその妻は、8月4日に来日、関西方面へ観光に行く途中、事故に遭っている。家族への第一報は、日航社員からの国際電話だった。男性の妹(36=ニューデリー在住)によれば、

「日航の人から電話で連絡がありましたが、あまりに突然なので全く信じられませんでした。その後、テレビでもそのニュースを流していましたし、新聞でも123便が墜落したことが書いてあったので、本当なんだという気持が大きくなってきました」

 男性は技術コンサルタント会社のボス、妻はイギリスに本社のある会社の重役。夫妻の補償金が2人合わせて約3000万円という件でも話題を集めたが、

「私たちが補償に合意した第1号だとは知りませんでした。とにかく、日航の人たちの対応には大変、満足しています。仲の良かった2人が最後まで一緒だったということが何よりの救いだと、今は思っています」

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