「小泉農相」の「備蓄米」大放出に農家が抱く“複雑な思い”…コメ作りに「時給10円」時代到来で、日本の食卓に何が起きるか
「令和のコメ騒動」について、1回目ではコメ不足になった原因、2回目には備蓄米の倉庫会社からの声を紹介してきたが、最後は「備蓄米不足による影響」について触れてみたい。
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キャンセルされた備蓄米
農林水産省によると、今月初め、随意契約方式で提供された備蓄米のうち2万9000トンがキャンセルされたという。その背景には、倉庫からの出荷や配送の遅れがあるとされている。小泉進次郎農水相曰く「出庫のスピードと量が、実需者の期待に追いついていない」とのことだが、当然である。
玄米のまま貯蔵されている備蓄米を販売するには、まず精米する必要がある。
小泉農水相は、新米が出る前の8月末までに100万トンある備蓄米すべてを放出する意気込みを示した。実際90万トンほどが放出されているが、これほどの量に短期間で対応できるわけがない。
備蓄米をスーパーまで運ぶ「物流」においてもそうだ。
備蓄米は国家の安全にかかわるゆえ、倉庫の場所はおろか、どの運送企業が輸送しているかは公表されていない。だが、現在の運送業界はどの企業も「2024年問題」の対応に追われている。ただでさえドライバー不足の現場。そんな最中に緊急放出されれば、現場は混乱必至だ。
キャンセルの背景には、「消費者の備蓄米離れ」も指摘されている。
販売直後は1人1袋、または1家族1袋などに限定して販売していたが、需要のピークは販売開始直後。現在はスーパーの棚に在庫が積み上がっている様子がSNSでも多く見られ、販売数の制限を解除しているところが多い。
ある消費者に話を聞くとこんな答えが返ってきた。
「備蓄米は食べないですね。当初から少しシラケた目で見てました。国民の不安を煽るようなパフォーマンスに乗っかり、朝から行列に並んでいる人が少なくなかったんじゃないかと感じる。もちろんブランド米の高騰で備蓄米しか手が出せなかった人もいるでしょうが、物珍しさで購入した人も多かったのでは」
東日本大震災でも4万トン
ただ、キャンセルが出ているとはいえ、すでに多くの備蓄米は放出済みだ。先述通り、政府は10年に1度の不作などに備えて、約100万トンを目安にコメを保管している。
24年6月末時点で91万トンあった在庫のうち、農林水産省は今年4月までに一般競争入札で大手集荷業者に計31万トンの備蓄米を放出。5月下旬の小泉農水相就任後には、計50万トンを随意契約によって売り渡している。
生産地の流通に詳しい元流通専門紙記者は、今回の放出は異例中の異例で、「この流れは備蓄米制度の終わりの始まりだと感じている」と話す。
「東日本大震災の時でさえ、4万トンの放出。消えた90万トンをどうやって充足するのか。来年はしっかり充足できる状態なのか。年貢を納めないといけない時代じゃないので、強制もできない。備蓄量を元に戻すには、おそらくこのままいくと5年以上かかると思います。小泉大臣はいざという時は、日本が最低限輸入しなければならない外国産米『ミニマム・アクセス米』を備蓄米の方に入れると言ってはいますけどね」
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