「冷やし中華にマヨネーズ」「味噌汁に柚子胡椒」 いつもの料理のちょっと意外な食べ方(中川淳一郎)
ネットでウケるネタ。その一つは「地域ごとの食文化」「意外な食文化」です。最近よく見かけるのは「名古屋人ですが、他県の人に『冷やし中華にマヨネーズを添える』と言うと驚かれる」というもの。
【写真を見る】ポン酢でもレモンでもなく…「生ガキ」の意外な食べ方とは?
映画「パルプ・フィクション」に「オランダ人はフレンチフライにマヨネーズをつけて食べるんだぜ」というせりふが登場します。が、アメリカ人には意外でも、オランダでは普通のことなのでしょう。何にでもマヨネーズをかける人を「マヨラー」と一時期言いましたけれど、私を含めて誰であれ、冷やし中華やフレンチフライとマヨネーズの相性は理解できるはずです。
子どもの頃、タコ焼きやお好み焼きにマヨネーズをかけるなんて考えられなかったところ、今や当り前のことに。それと似たようなものです。漫画「美味しんぼ」では、カツオの刺身にマヨネーズをつけるシーンが登場します。カツオ漁師がサラダの皿に誤って落としたカツオの刺身を食べたら美味だったため、遠洋漁業の漁師の間でこの食べ方が流行した由。
このような「意外な組み合わせ」は案外多く、まずは生ガキです。日本ではポン酢か岩塩+レモンという組み合わせが一般的ですが、米ニューオーリンズのソースがすこぶるウマい。タバスコ、ケチャップ、岩塩、すったホースラディッシュにレモン汁から成ります。ホースラディッシュは日本でもチューブで売られ、ホースラディッシュが原料の粉ワサビもあるので、ぜひマネしてみてください。
九州に住み始めてハマったのが、味噌汁に柚子胡椒を入れること。チューブではなく、農家のお婆さんが作るような瓶詰のものです。かつて私は七味唐辛子を加えて辛さを足していました。味噌のうま味がより出るからです。
あと、横浜が発祥の「家系ラーメン」の店では、新たな味の組み合わせを学ぶことができます。家系はご存じ豚骨醤油ラーメンです。テーブルやカウンターには、ニンニクやショウガのすりおろしのほか、胡椒、酢、いりゴマ、豆板醤、刻みタマネギが置いてあります。ラーメンの具材としてはゆでたホウレンソウが定番で、これに豆板醤を乗せて麺とスープと一緒に口に運ぶと絶品です。野菜をたくさん食べたい時はホウレンソウを増して豆板醤を包んでスープにつけるともう、いくらでもイケます。
刻みタマネギを初めて見たときは「えっ? トッピングに長ネギあるじゃん」と思ったものの、今やコレがなくては家系を食べた気がしない。しかし不思議なものでして、九州の(一般的な)豚骨ラーメンに刻みタマネギを入れてもウマくない。家系ならではの醤油の濃厚なスープと極太麺だからこそ合うトッピングなのでしょう。
都内の某有名中華料理店にあっては、常連たちが餃子を胡椒と酢で食べることを推奨しています。ただこれは「通」過ぎて、本当にウマいのか分かりません。
そういえば〈ソースがなく塩で食べさせるトンカツ屋でがっかり〉という原稿をネットで書いたら「舌バカが!」とコメントされました。塩がエラいとする風潮、素材の良さが際立ち、シンプルで粋だと言いたいのでしょうが、苦手です。




