捜査線上に浮上した「中国人」…強盗団リーダーが明かす「ナンペイ事件」の裏側 「強盗は少ない人数でやると失敗する。だから、失敗したんだ」
中国クラブでの“情報収集”
八王子事件解明のキーマンに浮上した「K・R」(54)。彼は中国・福建省の省都、福州市に隣接する福清市の出身だ。90年、日本に初来日。94年に不法滞在で一度、強制送還されるが、翌年、再度、日本に密入国した。表向き、東京や横浜の居酒屋などで働いていたが、やがて同郷の中国人らのネットワークで裏の稼業に手を染めるようになっていった。
原が解説する。
「横浜を拠点にして、福建省の仲間らと高級ブランドのバッグや貴金属類の強盗や窃盗を働き、売却していた。その売却を斡旋する場が東京の錦糸町でした。当時、錦糸町の歓楽街には自ずと中国人クラブが密集しました。そういう店は福建から出稼ぎにきた男らの溜まり場になっていたのです」
ある一時期、池袋の歓楽街のようにチャイナタウンと化すこの錦糸町の盛り場に原の姿があった。日中の捜査だけではなく、夜の街でもKに関する情報収集に没入していたのだ。身分を隠して客を装い、福建省の人間が集散する中国クラブに絞る日々。Kらがたむろしていた中国人クラブを探し当て、周辺にいる共犯者らの情報など、グループ解明の糸口を得られれば大きな成果と言えよう。
「この作業により、Kのグループが入り浸っていた~~というお店に到達しました」
「実行犯」と付き合っているホステス
この一種の“潜入捜査”によって、Kの中国での素顔も垣間見えてきた。
強盗で億単位の金を荒稼ぎしたKは、郷里に大豪邸も建てていた。しかも地元の福清市では、彼の仲間うちが犯罪自慢をするためか、ある噂が広がっていたという。羽振りが良くなったKらを指して曰く、「日本で強盗をして大儲けした。スーパーで女子高生を殺した事件の犯人もあいつらのグループだ」
そして錦糸町の捜査に心血を注ぎ続け、夜の街の人脈を広げる原に重要な情報がもたらされた。
〈八王子のスーパーで3人を射殺した実行犯とされる中国人と付き合っているホステスがいる。その彼女は~~という店で働き、源氏名は~~〉
原がこの中国人ホステスを探し求める作業に取り掛かったことは言うまでもあるまい。果たしてその顛末は――。
第3回【平成を代表する「未解決事件」の捜査が難航を極めた理由…夜の街に“潜入”した捜査員を襲った“身内からの妨害”】では、ついに掴んだ“手がかり”を追う地を這うような捜査の実態に迫っている。
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