13年ぶりに帰ってきた「あ展」 大人も夢中“動詞で遊ぶ”デザイン体験
デザインの本質
「あ展」で感じるのは、削ぎ落とせるところはとことん削ぎ落とした、一見無機質にも見えるシンプルな展示構成だ。陳列は整然としているし、キャプションの言葉は必要最低限。けれども少しも冷たい感じがしないどころか、だんだんと手間ひまかけて整然と整えた「人の手」が感じられてくる。そしてユーモアも見えてくる。
展覧会の監修者でもある佐藤氏は著書『塑する思考』(新潮社、2017)の中で繰り返し語っている。
「デザインの本質は、物や事をカッコよく飾る付加価値ではありません」(帯より)
「『間に入って繋ぐ』のがデザインの役割です」(176頁)
この思いが、展覧会とNHK Eテレの番組を通しての土台になっている。
「私は今、切実に、小学校の義務教育の授業に『デザイン』を取り入れるべきだと思っています。前述してきたように、ありとあらゆる物事と人との間にデザインはなくてはならなず、人の営みの中で何事かに気づき、これからを想像し、先を読みつつ対処するのがデザインであるならば、それは『気づいて思いやる』、つまり『気づかう』ことに他なりません。
デザインは、自ずと道徳にも繋がっており、それは、我々を取り巻く地球環境を人の営みと共に気づかい考えることでもある。
だから一日も早く、小学校低学年からデザインマインドを育む『デザイン』の授業を、世界に先駆けて日本で始めてはどうかと提案したいのです」(219頁)
本気でとことん作品を作り込む
「デザインあ」シリーズは、子供向けに作られたテレビ番組や展覧会であるにも関わらず、キャラクターは一切登場しない。その代わり、デザイナーやアーティスト、ミュージシャンが本気でとことん作品を作り込んでいる。
そこからは、子供一人ひとりを一人前として信頼し、対等に作品を提供している大人の姿が見えてくる。
「はぐくむ」
展覧会の中心に、この動詞を体感できる。












