令和の若者からは「Adoに似てる」なんて意見も… “シティポップじゃない昭和曲” 戸川純の85年発表作品が海外で怪ヒットのワケ

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令和ティーンを魅了するAdoの影響も

 さらに海外リスナーからのコメントで目立つのが、戸川のボーカリストとしての高評価で、「途中の声の切り替え方がすごい」「一人ですべて歌っているとは思えない」「音楽的才能を感じる」といったコメントで、その変幻自在ぶりから「Adoにも似ている」といった意見も幾つか見られた。

 Aメロでは内気な女の子がつぶやくように歌い、Bメロでオペラ風に高らかに歌い上げたかと思えば、サビでアイドル風にキュートに変わりつつ、ラストの“愛してるって言わなきゃ殺す”でドスを利かせる。このような変化にとんだ曲調は、当時よりも“歌ってみた”文化が浸透した現代の方が馴染みが良いし、それを世界的にも人気のAdoと比較するリスナーがいてもおかしくない。

 「好き好き大好き」の最大ピークが、TikTok上でバズった21年ではなく23年だったのは、もしかしたらAdoの海外人気が浸透した影響があるのかもしれない。

 こうした戸川の世界的な人気によって、日本でも再評価が広がり、2025年にはBOX商品『TEICHIKU WORKS JUN TOGAWA ~30th anniversary~』の再生産が、多くのファンからのリクエストに応え決定した。本作は、「戸川純(ソロ)」「ヤプーズ」「ゲルニカ」「東口トルエンズ」の名義で発表されたテイチク在籍時の作品を戸川自身が監修し、未発表音源や映像もおさめた6枚のCDと、3枚のDVDから構成されているそう。

 これまで日本の懐メロの海外人気といえば、松原みきや竹内まりやに代表されるシティ・ポップや、松田聖子や岡田有希子などのキラキラなアイドルポップスが主流と考えられていた。

 だが、実際は本作のような昭和の異色作や、HALCALIの「おつかれSUMMER」のような平成ヒップホップまで、多種多様に広がっている。

 個人的には、今後、カントリーとも相性が良さそうなフォーク系の楽曲や、ブラジルやハワイなど日系社会にも親しまれている演歌でも海外でバズらないかと、非常にワクワクしている。

(協力:ビルボードジャパン 取材・文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター 臼井孝)

■戸川純BOX『TEICHIKU WORKS JUN TOGAWA ~30th anniversary~』は8月11日まで予約を受け付けている。(https://teichiku-shop.com/products/detail/TES000026G)

■戸川純ライブ情報は以下の通り。
『Jun Togawa Live in Okayama』2025/8/2(土) デスペラード 岡山  
『戸川純 avec おおくぼけい』2025/10/29(水) 南青山マンダラ

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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