石破政権が「正当性」を主張する日米関税合意…エプスタイン問題で窮地のトランプ氏が狙った「サプライズ」なら「一方的な破棄」もあり得る

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石破政権は合意の正当性を証明しようと躍起

 7月23日に成立した日米関税交渉の合意内容が徐々に明らかになっている。

 最も注目を集めているのは、日本が米国に5500億ドル(約80兆円)分の投資を行うとする項目だ。80兆円という金額が日本の1年分の税収を超えるため、「米国に譲歩しすぎだ」「日本で産業の空洞化が進んでしまう」との批判が噴出している。

 これに対し、石破政権は合意の正当性を証明しようと躍起になっている。

 26日夜、交渉の責任者である赤沢経済財政・再生相がNHKの報道番組に出演した。そこで赤沢氏は、米国の関税率を15%まで引き下げたことで10兆円程度の損失を回避できたと述べた。

 さらに「80兆円の投資」は政府系金融機関による出資・融資・融資保証の枠であって直接的な財政支出を指すものではなく、出資分はその1~2%に過ぎないという。対米投資の利益配分が少ない(米国9、日本1)という批判についても、日本が失うのは「数百億円の下の方」とした。

 日本企業の対米投資にはこのところ目を見張るものがある。米商務省によれば、昨年の対米直接投資残高は前年比3.3%増の8192億ドル(約120兆円)で6年連続の世界首位となった。最も多いのは製造業で、前年比0.5%増の3860億ドルと全体の47%を占めた。

トランプ氏の独断専行により事務的詰めはナシ

 だが、日本企業の対米投資が今後も進む保証はない。日本経済新聞がまとめた今年度の設備投資動向調査で、米国での投資計画が前年比0.3%減の1兆1396億円であることが明らかになっている。

 5月31日時点のデータであり、今回の合意を受けて米国での投資が増える可能性があるが、トランプ政権下で米経済は減速傾向にあるため、政府系金融機関の支援が使われない可能性は十分にある。

 赤沢氏は80兆円の投資について、トランプ氏の任期中に達成できるとしているが、楽観的な見方だと言わざるを得ない。

 米国の主張が日本と異なることも気になるところだ。

 ブルームバーグの独占インタビューに応じたラトニック商務長官は、日本からの投資スキームについて、「米国がプロジェクトを選び、日本が必要な資金を提供する形になる」と述べた。これが正しいとすれば、日本にまったく決定権がないことになってしまう。

 このような主張が出てくる背景には米国企業の不満がある。

 米自動車大手3社は米国製の部品を含まない日本からの輸入車の関税率が引き下げられたことに強い不満を表明しており、火消しに追われるラトニック氏は合意の成果を過大に宣伝しているのが実情だろう。

 そもそもトランプ氏の独断専行がこのような混乱を生みだしている。予定になかった日本側代表団と会談し、その場で自らの成果をアピールする政治的な決断を行ったため、事務的詰めがなされなかったからだ。

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