石破政権が「正当性」を主張する日米関税合意…エプスタイン問題で窮地のトランプ氏が狙った「サプライズ」なら「一方的な破棄」もあり得る
トランプ氏の豹変、裏にエプスタイン問題か
トランプ氏の豹変ぶりには、エプスタイン問題が関係しているのかもしれない。
注目されているのは、未成年者への性的人身売買などで起訴され、拘留中に死亡した大富豪ジェフリー・エプスタイン氏の“顧客リスト”だ。米司法省が7日、リストは存在しないと発表したため、トランプ氏の岩盤支持層(MAGA派)から一斉に批判の声が上がっている。
トランプ氏は就任後、初めて窮地に立たされた。そこで岩盤支持層の不満を和らげるため、“日本との合意ができた”というサプライズを出せば風向きが変わるだろうと考えたとしても、なんら不思議ではない。
だが、この企みは失敗に終わった感が強い。
トランプ氏の支持率も右肩下がりだ。米国の世論調査・コンサル企業ギャラップは24日、トランプ氏の支持率は37%に低下し、就任後半年で最低になったと発表した。
赤沢氏は自身のSNSに任務完了と投稿したが、そうは問屋が卸さないようだ。ベッセント財務長官は23日、FOXニュースのインタビューで、四半期毎に日本の実施状況を評価して、トランプ氏が不満を感じれば関税率を引き上げると述べた。
ベッセント氏の発言について、赤沢氏はこのようなことを議論した記憶はないと否定しているが、求心力の低下に悩むトランプ氏が近い将来、今回の合意を一方的に破棄する可能性は排除できないだろう。
米国産エネルギー購入を切り札にせよ
このため、日本は今から再交渉に備え、切り札を用意しておくべきだ。
参考になるのが27日に成立した欧州連合(EU)と米国との間の合意だ。その中でEUは6000億ドル(約89兆円)分の対米投資と併せて、7500億ドル(約109兆円)相当の米国産エネルギー(メインは天然ガス)を購入すると約束した。ロシア産ガスへの依存から脱却するためだ。
筆者は原油輸入の中東依存度を下げるため、米国産原油を大量購入すべきだとかねて主張している。日本の石油企業は長らく米国産原油の購入に消極的だったが、減産を続ける中東産原油が割高となっている状況を受け、出光興産などは積極的になりつつある。
日米間の合意でも“米国産エネルギーの輸入拡大”の項目が入っている。具体的な成果を求める米国に対し、EUのように米国産原油の輸入額をコミットすることが効果的な切り札だと思う。その際、韓国の例にならい、米国産原油の輸送コストを政府が一部負担するなどの支援策が不可欠だ。
関税引き上げによる経済への打撃を回避し、エネルギー安全保障を向上させるため、日本は官民挙げて米国産原油の購入拡大に努めるべきではないだろうか。
[2/2ページ]

