公立中学に通う13歳の少年が“ゴルフを始めてわずか5年”で世界一に輝いた理由 マスターズ出場を目指す「小澤優仁」の現在地

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課題は英語力の向上

 自身の現在地を冷静に見つめる小澤選手は、昨年も世界ジュニアゴルフ選手権に出場して、準優勝。首位にわずかに及ばなかったものの、3日目には64で大会ベストを記録するなど、随所に見せる粘りのゴルフも光った。そして、2025年は、これまで4年間、日本代表として世界ジュニアゴルフ選手権で培った経験をもとに、さらにステップアップして、12-18歳の世界一を決める「USGA全米ジュニアゴルフ選手権」や世界最高峰ジュニアツアーである「AJGA(アメリカジュニアゴルフ協会)」に挑戦を開始した。

「日本や世界の地理が大好きなので、色々な国に出かけるのが毎回楽しみです」と話す13歳は、自身の現在地を冷静に見つめながらも課題克服に取り組んでいるが、その中で特に力を注いでいるのが、英語力の向上だ。

「僕はコースを回る時に、同じ組の人と話しながら自分のテンポを作っていくのですが、まだ僕の英語力が足りていないせいで、思い通りに話せないことがあって。もし英語力が上がれば、もっと自分のやりたいゴルフに近づけんじゃないかと思っているので、ゴルフのスコアを上げるためにも、英語の勉強も頑張っていきたいです」

 そう意気込む小澤選手だが、海外で活躍する未来を見据え、小学校5年生の時から週3回のオンライン英会話に励み、中学1年生時点で高校中級(高校1年生)程度とされる準2級を既に取得している。

「日本で英単語帳を見ながら勉強しているだけでは、なかなか上達しないなと思っていて。色々な方法があると思いますが、会話の機会を増やすことが一番大切なのかなと感じています。実際にアメリカの大会から帰ってくる度に『英語力が上がったような感覚』がありますから……」

 今年6月には、世界で活躍するPGAプロゴルファーの登竜門と言われる「USGA全米ジュニアゴルフ選手権」と「AJGA SERI PAK Desert Jr.」にいずれも最年少で出場し、体格の大きな現地の高校生を相手に、どちらもTOP10フィニッシュをするなど、想像を上回る成果を出してきた。

「全米では男女合わせて350万人のジュニアゴルファーがいると言われていますが、AJGAはその中でたった3,000人ほどしかランクインできない世界最高峰のジュニアツアーです。6月に、アメリカのトップ高校生を相手に、わずかな望みをかけて出場したAJGA SERI PAK Jr.の予選にて4位に入り、決勝大会に進んでランクインすることが出来ました。ランキングトップの16歳は、世界ジュニアの同日にPGAツアー(イスコ選手権)に出場していますし、自分もこのランキングをどんどん上げていくことに今からワクワクしています。」と目を輝かせている。

 また、キラキラした目と対照的に、冷静な性格も持っており、「タイガー・ウッズも短距離のパターを外してしまうことがありますし、僕の現状の実力では、1回も外さずに18ホールを回ることはなかなか難しい。練習の時は『パターを絶対に入れる』と心に決めて打つことを心がけていますが、試合でイライラしてもしょうがないかなと思っていて。いつも『ゴルフは時にうまくいかないこともある』と言い聞かせて、ラウンドに臨むことを心がけています」

 中学2年生とは思えぬ冷静さを持ち併せた小澤選手の夢は「自分のプレーで世界中の人々を感動させられるゴルファーになる」こと。そのために「マスターズなどの大きな大会で優勝しないといけないと思う」と自身の将来像を口にする小澤選手は、再来年の春に控えた高校受験に向けて、早くも頭を抱えているという。

「マスターズに出場するには、全米アマチュアゴルフ選手権で優勝し、世界アマチュアの中でトップになる必要があり、そのためにはアメリカの大学に入学しないといけない。高校からアメリカに行きたい思いもありますが、授業についていけるほどの英語力がなければ全く意味がありませんし、単位が取れない選手は試合に出られなかったりもする。日本の強豪校に進むか、アメリカに渡るのか。もう少し時間があるので、じっくり考えて進路を決めたいと思います」

 大いなる可能性を秘めた13歳のゴルファーは、喜びや悔しさを自身の力に変え、さらなる高みを目指していく。その頂に至るまでの道程を見守っていきたい。

ライター・白鳥純一

デイリー新潮編集部

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