「テレビに出ている姉貴が一番好きだな」 元キャンディーズ「田中好子」の運命を変えた「19歳でこの世を去った実弟」の言葉
「いつの日か妹の夏目雅子のように」
年が明けた2月半ば。一雄は医師からがん細胞が制御不能に増殖するラッシュの時期に入ったことを告げられた。田中に告知されたのは3月半ば、それから2週間ほど後に一雄が田中の肉声を録音した。その声が葬儀で流れたのをご記憶の読者も多いだろう。だが、それを聞かされていなかった親族らは驚いた。一雄の「田中好子、第2章、シーン1、テイク1、ヨーイ」という演出に、複雑な表情を浮かべる関係者も多かったという。
流れた声にはこんな下りもあった。
「いつの日か妹の夏目雅子のように、支えてくださった皆様に、社会に、少しでも恩返しができるように復活したいと思っています。かずさん、よろしくね」
キャンディーズ、田中好子、夏目雅子、小達一雄、小達家内の問題……。小達家に近い人たちに話を聞くと、時々に伊集院氏の名前が出てくることがあった。その際、極めて個人的な記憶が脳裏を過ることもあった。30数年前、ある出来事が原因で、伊集院氏から「今度、アイツ(筆者)に会ったら殴る」と言われたことがあった。もちろん、実現することはなかったが、昭和から平成の時代を駆け抜けるように生き抜いた田中、夏目、伊集院、3人の印象は強く心に残る。
別れの朝、田中の最後の言葉は一雄への感謝を込めた「おはよう」だった。実弟の言葉から始まり、小達家と運命をともにしたスーちゃん、田中好子の人生はこうして静かに幕を閉じた。



