「外国人に甘過ぎる『免税制度』を廃止すれば1600億円の税収増」 外資による土地買収など外国人問題のリアルに迫る 「有事の際に『敵対勢力の活動拠点』に」

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「非常に甘い日本特有のシステム」

 元金沢国税局長で早稲田大学大学院会計研究科の伏見俊行教授が言う。

「訪日観光客が商品を購入する時点で免税する日本の制度は、観光立国と経済優先の視点に立ち、どんどん買ってくれれば日本の経済に利する、だから買い物をしやすい環境を作ってあげましょうという考えに基づいています。ところが、これは世界の常識とはかけ離れた、非常に甘い日本特有のシステムなのです」

 訪日客にとって優しい制度は、それゆえ抜け道だらけでたやすく不正を招いてしまう。いわば“性善説”に立脚しているわけである。対して世界のスタンダードは、販売店でいったん税を納め、空港での出国時に払い戻しを受け取る仕組み。遅ればせながら日本も来年11月から、この「リファンド方式」に変更されるのだが、免税の是非については、

「課税権はその国の特権であり、確かに廃止したとしても訪日客が激減するとは思えません。ただし、主要国の中で免税をしない国は少数派です。国際協調の観点からは、引き続き免税するスタンスが適切な選択だと思われます。何ごとも自分たちだけが良ければよいという考えはいかがなものでしょうか」(同)

「ドイツではゴミの出し方なども教育」

 さてインバウンドとは別に、国内の在留外国人数は昨年末時点で約376万人。また外国人労働者は昨年10月時点で約230万人と、いずれも過去最多を更新した。外国人の労働問題に詳しい関西国際大学の毛受(めんじゅ)敏浩客員教授が言う。

「現在、日本には190以上の国と地域から外国人が来ていますが、暮らしについてのオリエンテーションは全くなされていません」

 例えばドイツでは、

「行政が100時間という時間を割き、ドイツ語教育も600時間行います。ゴミの出し方から、自身の宗教とドイツの法律が衝突した場合は法律が優先されることまで、あらゆるルールを教える機会を設けているのです。さらに受講を在留資格の更新と結び付けて半義務化している。これとは対照的に、支援がなされず日本語も不自由で職務能力も低いまま定住され、いわゆる“外国人問題”が生じているのが日本の現状なのです」(同)

 中途半端な状態がいっそうの悪循環を生んでいるというのだが、

「換言すれば受け入れる仕組み、つまり日本語学習、日本の生活習慣や法律、文化を教える体制づくりを早急に整えないと、社会との摩擦が今後さらに大きくなることは目に見えています」(同)

 そう警鐘を鳴らすのだ。

原因も性質も異なるテーマ

 選挙戦も終盤に入り、各党の訴えはますます熱を帯びていく。東京大学社会科学研究所の永吉希久子教授(社会学)は、

「メディアでは各党の外国人政策が並列されて論じられています。ですが、例えば土地の取得規制、公的医療保険の問題、非正規滞在者への対応などは、それぞれ原因も性質も異なるテーマであり、個々に精査して議論しないと本質がかすんでしまいます。有権者が適切に判断できるよう、各党は個々の政策意図について、根拠を持って明確に示すべきでしょう」

 果たして、どの党の政策が有権者の心に刺さるのだろうか。

 前編【「高速道路での逆走など外国人の事故が急増…」 参院選の争点・外国人問題のリアル 「国保の納付率は非常に低い」】では、自民も言及している「外免切替」制度や外国人の医療費問題について報じている。

週刊新潮 2025年7月24日号掲載

特集「天下分け目の7.20参院選 日本人ファーストでデマも飛び交う外国人政策『4つの大問題』」より

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