台湾有事は「27年が危ない」 与党の権力中枢にまで中国スパイが浸食… 台湾の危険な情勢を、日台交流の重鎮が明かす
「武力による有事は考えにくい」
ただし、武力衝突の可能性はいまのところ低いと見ている。
「トランプ大統領は、いざとなったら応援しないのではないかという懸念はあるものの、戦争状態になると、中国側にも人的物的損害は大きい。武力をもって統一しようとすれば、国際政治の舞台で暴挙と非難もされる。有事といっても定義がいろいろあるが、私は武力による有事は考えにくいものの、『認知戦』による統一はあり得るのではないかと考えています」
「認知戦」とは、偽情報(フェイクニュース)による世論工作などの情報戦、心理戦を含む「平時の戦争」のことだ。
「中国は、軍事演習などの挑発行為で台湾に圧力をかけながら、世論工作で台湾と日米との離反を画策しています。もちろん台湾で警鐘を鳴らす人はいます。しかし近頃では、台湾の人たちに聞くと、中国の武力行使はあり得ないのではないかと言う人が増えています。中国は、スパイだけでなく、台湾のインフルエンサーに働きかけて、SNSで偽情報を流しているといわれています。台湾の方から統一を言い出すように『認知戦』を仕掛け、孫子の兵法である『戦わずして勝つ』ことをもくろんでいるのです」
中国か台湾、二者択一を迫られたら……
だが、それでは台湾が香港と同じ運命をたどることになりはしまいか。
「かつて蒋経国総統は、中国と国交を樹立し、台湾と断交した日本に対し、『狼を部屋に引き入れることになる』と警鐘を鳴らしました。今まさに台湾は、狼を引き入れようとしているのではないか。当時、蒋総統はこうも言っていました。『共産主義というのは表面的には変わっても、本質的には決して変わるものではない。むしろ共産主義を変えようと思っている自由陣営の方が変質する可能性が高いのだ』と」
われわれは、中国か台湾か、二者択一を迫られた時にどうするべきか。
「私は、蒋介石総統が、日本に対する戦争処理において、『以徳報怨(徳を以て怨みに報いる)』の精神で臨まれたことに大恩があると思っています。総統が主張した通り、『賠償請求の放棄』『天皇制の護持』『在留邦人の早期帰還』『日本領土の分割統治阻止』がなければ、今日のような繁栄した日本にはならなかったはずです」
と、松本氏は語る。
「『われに自由を与えよ、しからずんば死を』と演説したのは米国の政治家パトリック・ヘンリー(1736~99)です。自由とは、命を懸けるに値するものです。中国と台湾、自由を尊重する国はどちらなのか、ということでしょう」
前編【「中国からスパイ活動のための工作費用をもらっている」疑惑が 台湾野党への「大リコール運動」が激化】では、野党・国民党の議員が大陸と交流を進めていく中で利益を得ているという疑惑を巡って、現地の政情に混乱が生じている問題について報じている。






