台湾有事は「27年が危ない」 与党の権力中枢にまで中国スパイが浸食… 台湾の危険な情勢を、日台交流の重鎮が明かす

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国民党はいつ「容共」に方針転換?

「かつて台湾を訪問すると、『大陸反攻』『反共』の文字が至るところで目に入りましたが、今や国民党は、政治的経済的にもっと大陸との関係を緊密にしようと言っています」

 と、松本氏は話す。国民党はいつから「容共」へと変わったのか。

「私は、国民党の馬英九総統(任期は08~16年)の2期目から変わったと思っています。馬氏は、中台関係の積極的な緩和を目指すようになった。そもそも馬氏は、留学していたハーバード大学の博士論文で、尖閣諸島は台湾の領土だと書いている。中国共産党にしてみれば、台湾は中国の領土の一部なので、その台湾に尖閣が帰属するならば、尖閣は中国のものだという論法になる。いまや中国の海警局の艦船が尖閣周辺に張り付いています。かつて国民党は、『国民が一体となってこそ、台湾の自主がある』という方針であったのに、蒋経国氏も嘆いていると思います」

「堂々と『中華民国』と」

 現在の頼清徳総統は、基本的には蔡総統の路線を継承している。「独立」とは明言していないものの、中国とは一線を画した台湾独自の政治体制で歩んでいく姿勢に揺らぎはない。

 松本氏は頼総統の発言に注目した。

「台湾と関わりを持っている日本人は、中華民国とは言いながらも民進党に配慮して中華民国(台湾)と言ってきました。私は頼総統とは、彼が台南市長をしていた頃からのお付き合いになりますが、頼総統は、今では中華民国と堂々と言っています。中華民国は孫文による辛亥革命で1912年に成立した。中国は49年の成立で、中華民国はそれよりずっと歴史があると言うのです。毎年、東京都港区白金台にある台湾の代表処で新年会が開かれます。これまで会場には中華民国(台湾)と看板に掲げられていましたが、今年は(台湾)がなくなって中華民国だけになっていました。日本と台湾との議員交流の場として、超党派でつくる日華議員懇談会(古屋圭司会長・所属議員288名)がありますが、毎年、10月10日の建国記念の双十節には都内のホテルでパーティーが開かれます。古屋会長はずっと中華民国(台湾)と言ってきましたが、今年は台湾とは言わないのではないか」

「27年が危ない」

 しかし、台湾があからさまに独立志向を強めれば、たちまち台湾有事の危機が高まる。

 米国は、中国との国交樹立に伴って台湾とは断交したが、一方で、「台湾関係法」を成立させて台湾擁護を約束した。台湾統一で「武力行使」もちらつかせ、軍備増強を図る中国に対して、米国、日本、フィリピン、豪州の4カ国は南シナ海で合同演習を行い、台湾有事に備えている。元自衛隊統幕長の岩崎茂氏は、退職後に台湾に請われ、台湾行政院の顧問に就任した。

 台湾有事はあるのか。松本氏によれば、

「27年が危ないといわれています。この年は人民解放軍建軍100周年にあたります。いま中国経済は下降しており、社会不安に発展すると、習主席は国民の目を外にそらそうとするでしょう。中国の台湾統一は『核心的利益』と言っているわけですから、それができなければメンツにかかわることになります」

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