「中国からスパイ活動のための工作費用をもらっている」疑惑が 台湾野党への「大リコール運動」が激化 

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今日まで続く自民党と台湾の交流

 9月12日、松本氏は、これまでに培った人脈を駆使し、張資政との面談を取り付けた。

 松本氏は、戦後、行政院長、総統府秘書長の要職を歴任したこの大物政治家を前に、

「仮に政府間の関係が、いかなることになろうとも、将来にわたって私たちの青年交流が発展を遂げ、さらに友情の輪を広げていくことができますようにご指導ご高配をお願い申し上げます」

 そう訴えた。張資政は「お話の件については、十分考えてみましょう」と穏やかに答え、翌13日、台湾政府は正式に特使受け入れを発表したのであった。

 72年9月29日、日本は中国との国交樹立により、結果的に台湾とは国交断絶になったものの、自民党と台湾との交流は今日まで続いている。

 その後、松本氏は76年に自民党を退職。運輸、労働大臣秘書官を経て、海部総理・自民党総裁秘書役を務める。

 2005年日台スポーツ・文化推進協会を設立し、理事長に就任。11年、長年の日台交流の功績に対して中華民国外交部より日本人初の外交奨章、16年には日本外務省より外務大臣表彰を授与されている。

「今日の香港は明日の台湾」

 このように台湾と深く交流してきた松本氏が見るところ、今の中台関係はどうなっているのか。

「国民党の母体となっている外省人(大陸出身者)と比べ、本省人(台湾出身者)の支持する民進党には、もともと大陸と一つの国家にしたいという考えはなく、自由主義を標榜し、できれば台湾という一つの国家として独立したいという考え方が強いのです」

 と、松本氏は語る。

「19年1月、習近平国家主席は年始の演説で、台湾に向けて、中華民族の偉大なる復興のために一致団結して、まずは一国二制度でいこうと言った。しかし、そのときの政権与党だった民進党の蔡英文総統は、受け入れるわけにはいかないと考えた。なぜなら、97年の返還以降、香港では50年間保証するとされていたはずの自由が弾圧されている実情があったからです。近年は民進党支持者の中にも大陸に投資し、経済交流を密にしている人が少なくないので、蔡総統も台中関係が険悪にならないよう配慮する必要があった。しかし、香港問題を機に『今日の香港は明日の台湾』という認識が高まり、対中強硬路線に一転したのです」

 後編【台湾有事は「27年が危ない」 与党の権力中枢にまで中国スパイが浸食… 台湾の危険な情勢を、日台交流の重鎮が明かす】では、台湾有事の現実的な可能性などについて詳しく報じる。

週刊新潮 2025年7月17日号掲載

特集「日台交流の重鎮が警告! 中国は『スパイ』と『偽情報』で台湾統一を画策している」より

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