「中国からスパイ活動のための工作費用をもらっている」疑惑が 台湾野党への「大リコール運動」が激化
【全2回(前編/後編)の前編】
世界各地で戦争が勃発している状況下で、次に危惧されるのが台湾有事だ。軍備増強にひた走る中国は、あからさまに台湾周辺で軍事的な挑発を繰り返す一方、「スパイ」と「偽情報」で台湾統一を画策しているという。日台交流の重鎮が、台湾有事の実情を警告する。
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「私は台湾と交流を始めて半世紀以上になります。今年は、私が会長を務める中央大学・日華友好会の仲間20人と、5月6日から台湾に行ってきました。この会は2000年に設立され、05年に台北の中正紀念堂(蒋介石総統の顕彰施設)に『友好の桜』を植樹して以来、台湾各地に桜を植え、交流を続けてきました」
と、日台スポーツ・文化推進協会理事長の松本あや彦氏(85)は語る。
同氏によれば、5月に訪台したときの現地の政情は、緊迫感を増していたという。
「台湾の友人たちは口々に、『頼さん(民進党の頼清徳総統、2024年5月就任)は大変ですよ』と言っていました。台湾の立法院(立法府)は一院制で、定数113名。そのうち与党の民進党の51議席に対し、野党は国民党52、民衆党8、無所属2となっていますが、野党は結束して民進党政権に反対しており、政府提案の予算案がなかなか通らない。国防費に至っては、頼総統は大陸の脅威に備えて軍備増強をしたかったが、反対する野党の要求をのみ、減額せざるを得なかったのです」
「中国から工作費用をもらっている疑いも」
そうした民進党と国民党との力関係が拮抗している状況下、国民党の活動を危惧する市民団体によって、国民党の立法委員(国会議員)24名のリコール運動が起こっている。
「理由は、国民党の議員が、大陸と交流を進めていく中で利益を得ているというものです。彼らは中国からスパイ活動のための工作費用をもらっているのではないかという疑いがもたれています」
リコール運動では、規定の署名数が集まり、罷免についての賛否を問う住民投票が7月26日に実施される。罷免されれば補欠選挙が行われ、民進党が6議席を取れば立法院で過半数を確保することになるが、予断を許さない状況であるという。
かつて国民党は「反共」を党是とし、中華人民共和国(以下中国)と対峙してきた。それがどうして変質してしまったのか。
日台交流の重鎮
戦後、中国共産党との国共内戦に敗れ、国民党の蒋介石総統が台湾を中華民国として以来、歴代の総統は厳家淦(国民党)、長男の蒋経国(同)、李登輝(同)、陳水扁(民進党)、馬英九(国民党)、蔡英文(民進党)、頼清徳(同)と続いてきた。
中華民国は1949年に布告された戒厳令以降、国民党の一党時代が続いていたが、87年、蒋経国総統によって戒厳令が解除され、国民党と民進党とで政権交代が行われるようになった。
両党の要人と人脈を築いてきた松本氏は、日台交流の重鎮であり、台湾情勢に精通している。さらに詳しく、台湾有事について語ってもらう前に、松本氏の経歴を紹介しておきたい。
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