「新宿タワマン刺殺」裁判傍聴ルポ 被害女性は「ナメクジ以下でも貸してくれるサラ金に行け」と和久井学被告を罵倒しながら貢がせていた “落ち度”は酌量されるべきか

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 昨年5月、東京・新宿のタワーマンションの敷地内でガールズバー元経営者の女性(当時25)が殺害された事件の裁判員裁判。7月10日、検察側は殺人の罪に問われた和久井学被告に対して懲役17年を求刑した。一方、弁護側は被害女性に数々の「落ち度があった」として懲役11年が妥当と主張。弁護側が主張するA子さんの“落ち度”は酌量されるべきなのかーー。結審するまで5日間にわたって開かれた裁判を振り返る。(前後編の前編)

弁護側が主張する「結婚詐欺」

 7月4日に開かれた初公判で和久井被告は起訴内容を認め、争点は量刑に絞られた。

 和久井被告とA子さんは18年頃、A子さんがやっていた「ライブ配信」を通して知り合い、オフ会でバーベキューや遊園地に行ったりする友人関係になった。

 関係が変わったのは、21年4月、A子さんが都内にガールズバーC を開店し、和久井被告が客として通うようになってしばらく経過した同年9月頃。弁護側によれば、和久井被告はA子さんに告白してOKをもらい、その後、結婚の約束も取り付けた。A子さんから出された条件は「私の夢に人生をかけること」だった。

 A子さんが語ったとされる夢は「関西コレクションのランウェイを歩くこと」で、そのために必要なのは「シャンパンタワー」だった。

 和久井被告は、A子さんの夢を叶え、結婚できる条件をクリアするために「命の次に大事」だったバイクと車を売り、1600万円をA子さんに渡す。そして、閉店したC店の次にA子さんが新たに開店したD店に通い詰めるようになった。

 だが、渡した「前金」の1600万円はどんどんDで消費されていき、2~3カ月で底をつき、和久井被告は新たに借金しないと店に通えなくなってしまった。

LINEのやり取りで浮かび上がった「異常な関係」

 8日の第2回公判では、この頃に和久井被告とA子さんの間で交わされていたLINEメッセージが検察官によって読み上げられた。やりとりから浮かび上がったのは、A子さんに執着する和久井被告と、和久井被告を罵倒しながらも「利用し続ける」A子さんという異常な関係である。

 店でトラブルを起こした和久井被告に対して、〈迷惑すぎる〉〈ストーカー〉となじるA子さん。すでにこの時点で警察にも相談しているようで、被害届を取り下げる取り下げないといったやり取りも出てきた。〈結婚するつもりないの〉と疑う和久井被告に対し、A子さんは〈やりたいやりたい脳内下半身野郎〉〈少しは身の程わきまえろ〉〈お前、何歳なの?〉などと激しく罵倒していた。

 だが、こんなやりとりを終えた後も2人はすぐに仲直りして、和久井被告は店に通い続けるのである。〈かわいい写真ちょうだい〉と和久井被告がせがみ、〈はい〉と送るA子さん。A子さんがたびたび、店への「送り迎え」を要求することもあった。

〈エースだと思っているかもしれないが代わりなんかいくらでもいるから〉とA子さんが詰った翌日にも、和久井被告は店に行っており、〈Aさんアフターしてくれてありがとう〉と感謝のメッセージを送っていた。ドン・キホーテでガスライターを買わされる“パシリ”も喜んで引き受けているようなやり取りも。

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