「新宿タワマン刺殺」裁判傍聴ルポ 被害女性は「ナメクジ以下でも貸してくれるサラ金に行け」と和久井学被告を罵倒しながら貢がせていた “落ち度”は酌量されるべきか

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〈不動産ローンに親と一緒に申し込んで、家の担保入れたか?〉

 その数日後には〈金額だけ増えていってデートすらさせてもらえない〉〈告白してから5カ月経つけど、日曜日に1日も会えないなんてある?〉と不満を漏らす和久井被告に対して、A子さんが〈黙って働いていろよ、暇人〉〈お前、キモすぎて笑う〉〈こんなキモジジイと結婚するならゴキブリ食べた方がマシ〉とキレ返すのだ。

 金銭で揉めるやり取りも多く読み上げられた。

〈結婚するって言ったからお金渡したのに〉(和久井被告)。〈明朗会計って言葉知っている?〉(A子さん)。

 後半のやり取りでたびたび出てくるのが「3・22タワー」だ。3月22日はA子さんの誕生日。和久井被告は誕生日にシャンパンタワーを入れたいのだが、もう資金に余裕がなく、しまいにA子さんに借金まで申し込んでいた。それに対するA子さんの答えは非情な内容で、

〈一番審査早いS銀行の不動産ローンに親と一緒に行って、家の担保入れたか? ここで金借りられなかったらナメクジ以下って言われている札幌のサラ金には行った? 何もしていないよね?〉

最後のシャンパンタワーの後で…

 さらにA子さんは〈バイトル見て今日からドライバー掛け持ちしてね〉などと、ドライバー仕事を掛け持ちしてシャンパンタワー代を稼ぐようにも進言していた。

 結局、和久井被告は「3・22タワー」のための前金を用意できたようで、〈お姫様、60万円ご用意できました〉とLINEを送っていたが、この日が最後のシャンパンタワーとなった。翌日にはA子さんはライブ配信で和久井被告を指すような言い方で「迷惑料としてお金を搾り取っている」と話し、和久井被告は激怒。A子さんは連絡を断つようになり2人の関係は完全に断絶するのである。

 それから騙されたと怒った和久井被告はA子さんに対し返金を求めて、店や自宅マンションで待ち伏せするようになった。一方、A子さんは新宿警察署へ和久井被告からストーカー被害を受けていると被害申告。5月25日、新宿警察署は和久井被告をストーカー規制法違反で逮捕し(その後不起訴処分)、和久井被告は1年間の接近禁止処分を受けた。

 その後、事件が起きるまでしばらく2人は会うことはなかったが、事件が起きる数カ月前に和久井被告は、A子さんが再開していたライブ配信をこっそり聞くようになった。そしてそこでA子さんは自分の悪口を言い続けていることを知るのである。

 事件が起きた前日の24年5月7日にも、A子さんはライブ配信で、和久井被告の本名を出して、警察に逮捕されたなどと語っていた。それを聞いた和久井被告は川崎の自宅からA子さんの住む新宿のマンションに車で向かい、待ち伏せし、翌8日3時頃、マンションから出てきたところを見つけて追いかけて押し倒し、用意していた果物ナイフ2本を使って殺害したのだった。

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