新宿タワマン刺殺事件初公判 弁護側が訴えた「私の夢のために人生をかけてくれたら結婚する」と言われて貢いだ1600万円が「迷惑料にされた絶望」
「私の夢は関西コレクションのランウェイを歩くこと」
21年頃、和久井被告が交際を申し込むとA子さんはOK。ただ関係が縮まる気配がなく、ある日大喧嘩となり、和久井被告はこれで終わったと思ったが、
「しばらくすると、A子さんから連絡があり『この前のことは水に流して欲しい。私の夢のために人生を賭けてくれたら結婚する』と言われ、被告は嬉しさのあまり『わかった、どうすればいい?』と聞いた。A子さんから『私の夢は関西コレクションのランウェイで歩くこと。手助けして欲しい』と言われ、店でシャンパンを入れ、命の次に大事にしていた車とバイクを売却し、1600万円を渡したが、それから急にA子さんの態度が変わり、イライラすると罵詈雑言を言われるようになった」(弁護人の冒頭陳述より)
「その後、A子さんがライブ配信で自分について『迷惑料としてお金を搾りとっている』と話しているのを聞いて、お金を返して欲しいと思ってマンションや店に行ったが、ストーカーにされて警察に突き出された。警察に対して逆に被害を訴えたがまともに受け取ってもらえずに『弁護士を雇った方がいい』と言われた。だがもう被告にはお金がなく、自分で直接話をつける方法しか思いつかなかった。釈放されて接触禁止になった後、高い勉強代だと思ってA子さんを忘れて、新しい趣味を見つければよかったができなかった。なぜならば、長年の趣味であった車やバイクはもう残っておらず、残されたのは多額の借金だけだったからだ」(同)
「犯行日は、ライブ配信でA子さんが自分の悪口を言っているのを聞いて、A子さんのマンションに行った。ナイフを見せて脅せば謝ってお金を返してくれると思っていたが、A子さんが走って逃げ出し、捕まえた後も悲鳴を上げ続けたので、このままではまた自分が逮捕されてあることないこと言われてしまうとパニックになり、せめて一矢報いたいと切りつけ、一度火がついた感情を止められずエスカレートさせて何度も刺してしまった」(同)
「やめて」「死んでくれ」
弁護人はこう和久井被告の心境を代弁し、「別の解決方法があったのか、全部を被告のせいにできるのかよく考えて欲しい」と裁判員に訴えた。
その後始まった証拠調べの中で検察側から犯行状況の詳細が明かされた。遺体には切創が18箇所あり、一番深い傷は11センチだった。傍聴席からは見えなかったが、犯行時、エントランス前まで和久井被告がA子さんを引きずる場面を映した防犯カメラ映像が裁判員や弁護人席の前のモニターに映し出され、和久井被告は表情を変えずにじっと見ていた。犯行に使われた実物の果物ナイフ2本も法廷内で提示された。
犯行の様子を近くで録画していた人がいて、その映像に残っていた2人の最後のやり取りの書き起こしも読み上げられた。
A子さん「ねえ、ほんと話を聞いて。言えないことがあるの」
和久井被告「ふざけんな」
A子さん「ほんと、そうなの」
和久井被告「うるせー」
A子さん「やめて、やめて、やめて」
和久井被告「死んでくれ」
午後には検察側証人としてA子さんの母親が出廷。そのやり取りでA子さんが別の従業員だった男性と22年から昨年まで結婚していたことが明かされた。母親は「まだ事実として受け止められていない。今後も受け止めることはありません」と我が子を失った悲しみを語った。
裁判は来週も続き、9日には被告人質問が予定されている。和久井被告が自身の犯行をどう振り返るのか注目したい。









