金利を下げたい「トランプ氏」と下げない「FRB議長」の不協和音 早期退任まで迫り始めた政権側の“事情”は「米国経済に灯る黄信号」か

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債務の満期到来で「津波」に危機感

 国内総生産(GDP)の6分の1を占める不動産市場のスランプが災いして、米国経済がリセッション(景気後退)入りするのではないかとの指摘も出ているほどだ。

 米国の商業用不動産市場を巡る信用不安が続いていることも気がかりだ。

 MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスによれば、採算面で問題を抱える商業用不動産は3月末時点で前年比23%増の1160億ドル(約17兆円)と、10年強ぶりの高さとなった。米連邦預金保険公社(FDIC)も5月の報告書で、商業用不動産向け貸し付け債権に占める延滞・未収利息不計上の割合が、今年に入って2014年以来の水準に達したと指摘している。

 関係者の間では、今年末以降に到来する債務の満期到来で「津波」のような問題が生じるとの危機感が強まっており、不動産バブル崩壊に伴う金融危機が発生する可能性は排除できなくなっている。

 不動産バブルの崩壊を防止するためには借り入れコストの引き下げが焦眉の急だが、インフレ抑制を最優先と考えるFRBは“自らの使命ではない”と考えていることだろう。

 トランプ政権は必死になってFRBを無力化させようとするだろうが、それによって経済の悪化を食い止めることはできるのだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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