検察首脳人事に地殻変動? トップは3代続けて「東大以外」から…いまだ影を落とす“安倍政権下の騒動”とは

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「検察のトップ人事に地殻変動が起きているようだ」

 そう語るのは、検察庁に勤務経験がある弁護士。発言は、7月半ばに行われる検察幹部人事で東京高検検事長に法務省の川原隆司事務次官、後任の事務次官に森本宏刑事局長を起用することが6月24日に閣議決定されたことを受けたものだ。2010年の大阪地検特捜部の証拠改竄事件以降、検察は冬の時代を迎えており、大川原化工機の冤罪事件でも東京地検の起訴を違法と認定した損賠訴訟判決が確定したばかり。その検察の本丸で起きている地殻変動とは何を意味するのか。「東大時代が終焉を迎えようとしているということです」(同弁護士)。その真意を紐解く。

史上初の女性総長起用

 検察組織の頂点に位置するポストが、検事総長だ。昨年、史上初めて女性が起用されて話題を集めたが、それ以前の10人の総長のうち、実に8人が東京大学法学部OBである。第23代検事総長の但木敬一氏、24代・樋渡利秋氏、27代・小津博司氏、28代・大野恒太郎氏、29代・西川克行氏、30代・稲田伸夫氏、31代・林眞琴氏、32代・甲斐行夫氏……。検事総長に上り詰めるには、法務・検察行政の事務方トップの立場にある法務事務次官と、検察ナンバー2の東京高検検事長を経るのが慣例だが、8人の中で甲斐氏だけが、法務事務次官を経験していない。

「まさにホップ・ステップ・ジャンプといった具合に、出世コースのゴールテープを切るのが“赤レンガ派”と呼ばれる、検察のエリート集団です。その中枢にいるのが司法試験で常に合格者数トップにある、いわゆる東大閥です。その牙城が音を立てて崩れ出しているようなのです」(前出・弁護士)

 戦後の検事総長の出身校をみると33人中、25人が東大(旧東京帝大含む)で、同じ旧帝大の京大が4人なのに対し、それ以外は18代・吉永祐介氏の岡山大、25代・大林宏氏の一橋大、26代・笠間治雄氏と昨年、女性初の検事総長となった33代・畝本直美氏の中央大。このうち京大の3人と大林氏は、やはり事務次官と東京高検検事長を歴任している。

「吉永さんと笠間さんは異例中の異例の人事というのが検察一般の認識です。田中角栄元首相を逮捕したロッキード事件最大の功労者で、『ミスター検察』と呼ばれた吉永さんと、“政治とカネ”に徹底的に切り込んだ笠間さんは、いずれも東京地検特捜部長を務めた辣腕検事で、検察史上、余人をもって代えがたい存在です。吉永さんは、『政界のドン』こと金丸信・元自民党副総裁の政治資金規正法違反事件で、事情聴取を見送り“権力者を特別扱いした”と非難を浴びた検察の威信を取り戻すため。笠間さんは、大阪地検特捜部の証拠改竄事件で地に落ちた検察の信頼を取り戻すため、それぞれ異例の抜擢となったレアケースでした」(前出・法曹関係者)

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