検察首脳人事に地殻変動? トップは3代続けて「東大以外」から…いまだ影を落とす“安倍政権下の騒動”とは
3代続く可能性も
法務省中堅幹部によると、昨年7月の畝本現総長の起用は「2016年の女性活躍推進法施行で加速した自公政権が掲げる女性活躍政策に沿って行われたもの。取りあえず学閥は度外視して実行された目玉人事だった」という。
今回、東京高検検事長に起用された川原氏は慶大法学部、事務次官の森本氏は名古屋大法学部の出身だ。このまま順当に行けば、検事総長が3代続けて東大以外から輩出される可能性がある。
「森本さんは5年ほど前、週刊誌で『名古屋大卒では初の検事総長へまっしぐら』と書かれたこともありますが、本人は岐阜の同郷で、リクルート事件やゼネコン汚職事件などを手がけ、自身の武勇伝を著書の中で明かした元東京地検特捜部長の熊崎勝彦氏を慕って、同じ特捜検事の道を選んだ人です」(前出・関係者)
17年ぶりの政界汚職となったIR汚職事件で秋元司元衆院議員(2019年)を、法相を務めた河井克行元衆院議員と妻の案里元参院議員(2020年)を選挙違反で逮捕した際(2020年)、捜査を指揮したのが森本氏だ。
「熊崎さんも森本さんも、ともに特捜部長として政界から恐れられた先輩後輩の間柄です。だから森本さんは東大閥からも政権与党からも、諸手を挙げて総長に推戴される立ち位置とは言い難いんです」(同)
「赤レンガ派」の語源となっている赤レンガ造りの旧庁舎に代表される法務省トップ(事務次官)として、立法府・政界への対応に汗を流すことが検事総長への最終関門。にもかかわらず次官を経験していない甲斐氏と畝本氏は頂点に上り詰めている。その背景について、同中堅幹部は「別の理由があるとささやかれています」と打ち明ける。
その「別の理由」とは、政権与党に睨みを利かせる特捜部をコントロール下に置きたかった安倍政権が、政権寄りの元東京高検検事長・黒川弘務氏の定年延長を可能にする法案を強引に閣議決定し、検事総長にしようと企図した事案(2020年)に端を発する。既定路線では、黒川氏の司法修習同期だった林眞琴氏が総長ポストに就く予定だった。しかし、安倍政権のゴリ押しで林氏の去就に暗雲が漂うことになる。
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