中学で相撲留学、初優勝を決める前日も「よく眠れました」 最速横綱「大の里」が歩む“唯一無二”の土俵人生【令和の名力士たち】
中学生でみずから選んだ「相撲留学」
石川県河北郡津幡町で生まれた大の里こと、中村泰輝少年は子どもの頃から体が大きく、本名の「ダイキ」から付いたニックネームは「ダイちゃん」。
その体を生かせると相撲を勧めたのは、アマチュア相撲経験者の父だった。父の指導もあって、徐々に力を付けていった泰輝は、小学5年生で「わんぱく相撲全国大会」に出場。そして6年生の時、「もっと強くなりたい」とみずから選んだ道は、親元を離れて新潟県糸魚川市の能生中学に「相撲留学」をするというものだった。
相撲部の寮で合宿生活を送り、中学校へは徒歩で通った。授業が終わった放課後は相撲の練習という「相撲漬け」の毎日が続いた。その努力が実り、中学3年の時には少年相撲大会「第6回 白鵬杯」で優勝し、念願だった「日本一」を達成。
その後に進んだ新潟県立海洋高校の相撲部時代は、1年生で団体戦のメンバーに選ばれたのだが、3年間で全国大会でのタイトルは1つに留まった。
“不完全燃焼”と“悔しさ”を踏み台にして
「不完全燃焼でした。もっと強くなって、ゆくゆくは大相撲の世界で活躍したいと思っていた時に、声をかけていただいたのが、日体大の斎藤（一雄）監督でした。斎藤先生から、直接体の使い方や細かい技術を教えていただき、1年生の時からタイトルを取ることができたんです」
想定外の活躍に、「自分でもまさか……」と思ったと振り返る大の里だが、2年時は個人タイトルが取れず、悔しさに暮れた。
その悔しさは、3年時に生きた。
全日本相撲選手権で優勝し、「アマチュア横綱」を獲得。4年生では、国際大会の舞台も経験した。アメリカで開催された「ワールドゲームズ」で日本代表として、無差別級で優勝。「世界一」に輝いた後は、2年連続アマチュア横綱という快挙を成し遂げた。
泰輝の背中を押した先輩・高安
「アマ13冠」のタイトルに輝いた泰輝は、複数の相撲部屋から勧誘を受けていた。
「力士人生をどの部屋で過ごしたらよいのだろう？ と、本当に迷っていましたね。これまで、中学、高校、大学進学の時も、進路を自分の意志で決めてきたので、自分の目で確かめて、選びたいと思っていました」
創設されたばかりの二所ノ関部屋も、候補の1つだった。稽古見学に訪れた大学生の泰輝に胸を出してくれたのは、師匠の弟弟子でもある幕内・高安（高＝はしごだか）。
「高安関の胸は分厚く、プロのすごさを感じました。そしてその時、『稀勢関（二所ノ関親方）の部屋に世話になったほうがいいよ』と、アドバイスしてくれたのが高安関でした。都心から離れていて、相撲に集中できる環境だし、師匠からいろいろ話をうかがって、『ここで指導してもらいたい』と思ったのです」
こうして、令和5年4月、大相撲二所ノ関部屋に入門。四股名は、若き日の師匠の四股名の候補にも挙がったという「大の里」に決まった。
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