「日本全土をいつでも空襲できる状態になりかねない」 中国の海軍の実力は「侮れない」 現役自衛官が解説

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「まだまだ見かけ倒し」だが……

 実際、今回の空母への対応で日米の「防空の穴」が露見してしまったと伊藤氏は語る。

「空母が活動した海域は日本本土とグアムの中間であり、どちらから戦闘機を緊急発進させても1~2時間かかってしまう。最も近いのは硫黄島ですが、滑走路だけで戦闘機や対空ミサイルは配備されていません。今回P-3Cへの急接近に日米は対応できておらず、中国軍は第2列島線付近で自由に活動できると自信を深めたとみていい」

 一方、先の織田氏は空母の構造に着目すると「まだまだ見かけ倒し」だとする。

「山東と遼寧はどちらもへさきが反り上がった“スキージャンプ型”です。艦載機は自力で飛び立つ必要があるため、重量がある空中早期警戒機などは発進できません。これが弱点で、遠方の敵機を発見する早期警戒機が運用できなくては、簡単に敵の攻撃を許してしまうのです」

 これでは太平洋上で米軍を相手取るなど遠い夢だが、目下試験中の3隻目の空母「福建」が就役すれば話が変わってくるという。

「福建は航空機を機械の力で押し出す“カタパルト型”です。これがあれば空中早期警戒機を挙げて山東・遼寧を支援できるほか、武器弾薬をフル搭載した戦闘機も発進可能です。福建は米国でもまだ完全には実用化できていない、リニアモーターカーの原理を活用した“電磁カタパルト”を搭載する予定です。どこまで実現可能か分かりませんが、テストは進んでいるといいます」(同)

「日本全土をいつでも空襲できる状態に」

 前出の記者いわく、福建の就役は近いとの情報があるという。

「今年は第2次世界大戦の終戦から80年の節目です。中国では10年前“中国人民抗日戦争・世界反ファシスト戦争”の勝利を祝うとして、大規模な軍事パレードを行いました。今年も類似の式典があるといわれており、福建がそういった儀式の場で就役するのではないかといわれています」

 さらに中国は4隻目として、原子力空母を建造しているとの見方もある。先の伊藤教授が先行きを憂える。

「中国は現在、計5隻の空母を配備することを目指しています。もし実現すれば日本の南太平洋上に中国空母が常駐し、日本本土をいつでも空襲できる状態になりかねません。日本も『いずも』や『かが』を改修して空母化しましたが、載せられる戦闘機の数は10機ほどと、山東・遼寧の二十数機に大きく劣ります。台湾有事や中国の海洋進出を考えれば、西太平洋の“穴”を埋めることは急務であり、海空自衛隊の体制強化は必須です」

 後編【「中国は日本のレーダーの電子情報を調べている」 中国製ドローンの“侵入”の狙いとは】では、今回中国機が海自機に異常接近した“政治的な側面”について、専門家の分析を紹介する。

週刊新潮 2025年6月26日号掲載

特集「日本にちょっかいを出す 目障りな中国軍」より

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