般若の“仮面女”が見る者を睨み付け…「宮崎勤」が拘置所で描いた“奇怪すぎる”イラスト、連続幼女殺人犯の獄中読書リスト
多重人格説
「多重人格」は他の人格の行動を覚えていないというのが通説。鑑定医も「今田勇子」の犯行文に覚えがないという宮崎の証言が「多重人格」判定の理由と言う。
「もうひとりの自分が殺すのを見た」という証言は矛盾するが、これは「人格相互に多少のつながりはある」と説明する。いずれにせよ「多重人格」を採用するかどうかは裁判所の判断。司法記者が言う。
「多重人格という鑑定が法廷に出たのは宮崎が初めてだが、起訴前の簡易鑑定では前例が1件ある。1992年に四国で20代の女性が恋人を殺した事件で、この時も宮崎同様“目の前で、自分と同じ姿の人間が殺したのを見た”と証言。責任能力がないというので不起訴になった。裁判所の習性として前例に従う可能性は大きい」
いっぽう、佐木氏が言う。
「裁判所も宮崎の言動はおかしいと思っているハズ。が、多重人格を採用するのはかなり勇気がいる。宮崎で前例を作って、今後も刑事事件で多重人格が続出するのは困る。裁判所がどういう判断をするか、まったく分かりません」
裁判は今年(1996年)中に結審、来春(1997年)までには判決が出る。宮崎の本当の心の中は、一体どうなっているのか。奇怪なイラストの数々を見ると、謎は深まるばかりである。
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この記事の翌年、東京地裁は宮崎に死刑判決を下した。
裁判長は、「多重人格」「精神分裂病」との鑑定結果を退け、「性格の極端な偏り以外に精神病様の状態にはなく、完全責任能力を認めるのが相当である」と認定した。判決は控訴審、上告審でも覆らず。一方で、宮崎は最期まで不服を唱えていたという。
また、先のイラストを見た国際医療福祉大学の小田晋教授は、「FOCUS」1999年1月27日号でこう述べている。
「(登場人物の足が地に付いていないのは)性的な幻想があることを表している」
「(中心人物に表情が描かれていないのは)存在感が希薄で社会に心を閉ざしていることを表している」
そして、「多重人格者」説を否定し、宮崎を「性的サディスト、快楽殺人者」と規定している。
世を去ってから17年。宮崎の“心の中”を指し示したイラストは、今なお、猟奇犯罪者の抱える闇の深さを物語っているように見える。
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