般若の“仮面女”が見る者を睨み付け…「宮崎勤」が拘置所で描いた“奇怪すぎる”イラスト、連続幼女殺人犯の獄中読書リスト

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30冊以上のリスト

(1996年)7月17日、東京地裁で宮崎の第35回公判が開かれ、3年半ぶりに被告人質問が行われた。裁判ではまず検察側の最後の証拠申請が行われたが、その中で宮崎が今年になってから拘置所で読んだ30冊以上の本のリストが読み上げられた。

 1月 雑誌「刑事弁護」差し入れ。『戦後民主主義の黄昏』(大塚英志著)購入。2月 『逸脱の精神誌』(小松和彦著))、『責任のゆくえ』(佐藤直樹著)購入。3月 雑誌「刑事弁護」購入……。

 マンガ本に混じって、法律書、精神医学書が多いのが特徴的だ。宮崎は、自分なりに裁判のこと、そして自分の精神状態を把握しようとしているのだろうか?

別の島のような気が……

 次に、田尾健二郎裁判長による宮崎への被告人質問が始まった。が、宮崎は、この日も便箋にイラストを描いていた。

「何をメモしているんだい?」

「……絵を描いている」

「証言を聞いていないのかい?」

「あんまり関心ないし」

「事件をどう感じていますか?」

「……別の島のことのような気がする」

ネズミ人間

 4人の幼女殺人事件に話が進むと、宮崎の発言はさらに異常になっていった。

「(犯行時は)ネズミ人間が出て来ておっかなくなり、わけがわからなくなった」

「“ネズミ人間”というのは?」

「顔から下までネズミ色。周りの木の陰からスーッと出て来る。(被害者の)子供が泣きだして裏切ったとき出て来て、恐怖の中に叩き込まれて分からない」

「調書には、“女性の性器をホルマリン漬けにしたかった”とあるが、本当か?」

「そういう命令もありました」

 そして、裁判長が「君がやったね?」と聞いたとき、宮崎は重要な証言をした。

「私の目の前に出てきた、もうひとりの私がやったんです」

死刑が無期懲役に

 裁判は「多重人格」という宮崎の精神鑑定結果を巡って、検察と弁護側の攻防が続いている。宮崎に対しては今まで2回の精神鑑定が行われた。1回目の結果は「責任能力はある」。が、弁護側の再申請で行われた再鑑定では「精神分裂病」と「多重人格」というふたつの報告が出された。2回目の結果によれば「心神耗弱」で一等減刑つまり死刑が無期懲役になる。宮崎裁判をずっと傍聴して来た、作家の佐木隆三氏が言う。

「あれだけの活字を読んでいるんだから、宮崎はまともで法廷の言動は演技という気もする。が、多重人格の報告を出した鑑定医は“詐病の疑いもあるが臨床経験から見てあの演技は無理”と言うんです」

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