なぜ美人アスリートの「異業種転職」はたたかれる? 女優デビューを果たす本田真凜に向けられた批判の目
元フィギュアスケーターの本田真凜(23)が2025年9月公開予定の映画「カラダ探し THE LAST NIGHT」で女優デビューする。しかし、SNSなどでは批判的な声も目立っていて……。【冨士海ネコ/ライター】
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かつて氷上を華麗に舞い、多くの観客を魅了してきた元フィギュアスケーター・本田真凜さんが、映画「カラダ探し THE LAST NIGHT」で女優としての第一歩を踏み出す。そのかわいらしい姿が放つしなやかな表現力は、演技という新たな舞台でも光を放つ可能性を私たちに感じさせてくれることだろう。
だがSNSやネット上には、祝福や期待と共に、こんな声も少なからず見られた。「結局は芸能界入りか」「演技したことないのに目立つ役?」「また“勘違い”アスリートが増えた」…これらの反応は、本田さん個人に対する不信というよりも、異業種、特に別ジャンルで活躍していた女性が女優に転じることへのアレルギーともいえる。
本来であれば、複数の分野で才能を発揮することは歓迎されるべきだ。しかし、俳優という職業に限っては、なぜか異業種女性の進出に対してだけ、不信感や冷笑、時には嫌悪すら含んだ反応が起きる傾向がある。それは人気アスリートでも例外ではない。
「また顔で得した」? 「努力&下積み」神話が無効化されてしまう異業種美女たちの女優デビュー
「女優」を名乗るには、本来オーディションを受け、舞台で汗をかき、小劇場から地道にキャリアを重ねていく、というイメージがいまだに強いのではないだろうか。その文脈の中で、スポーツ選手やアナウンサー出身の女性が、演技経験もないままドラマや映画で「あっさりと役をもらう」ことに対しては、無視できない怒りや疑念が吐き出される。「あの苦労を経験していない」という「ショートカット感」が批判を招くのだろう。
実際こうした批判を最も多く受けているのが、元キー局にいた女子アナたちである。例えば元TBSアナの田中みな実さんや元テレビ東京アナの森香澄さんが女優として活動を始めた際にも、演技力以前に「また女優デビュー?」「女子アナはタレントになるための踏み台だったんだ」「顔が良いだけで役もらえてラクだね」といった反応が散見された。
これは「かわいさ」や「顔」を利用して活躍の場を広げる女性への定型的な不信感であり、その覚悟の有無が問われている。そこにあるのは、「順序を守れ」「舞台裏を知らずに表舞台に立つな」という、ある種「下積み至上主義的価値観」なのかもしれない。
もちろん本田さんに向けられた「アスリートとしてはカワイイから得しただけ」「滑ってただけの人なのに?」というコメントも、彼女がどれだけ努力してフィギュアの道を歩んできたかに関係なく、「演技界の文脈」における苦労の不足を責める視線といえる。「努力」という物語をすっ飛ばすな、という怒りは、異業種から参入する美女が受ける宿命のようなものなのかもしれない。
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