史上最悪のコンビ解散…オンラインカジノ問題で「消える芸人」と「残る芸人」の条件

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実力と覚悟

 今回処分された6名の中には、もともと好感度が極端に高いような人はいないし、広告案件が多い人もいない。ただ、あえて言うなら、その6名には含まれていないが、自らオンラインカジノ経験を告白した令和ロマンの高比良くるまは、CM出演の経験があり、広告業界でも期待されている存在だった。今後はそういう仕事に携わるのは難しくなるだろう。

 一方、芸人としてのキャラクターと問題行動との整合性が取れている場合、つまり、もともと破天荒なイメージやアウトロー的な言動で知られていたような場合には、むしろその行動が想定の範囲内として受け止められ、大きなダメージを被らずに済む可能性がある。

 ただ、そこにも一筋縄ではいかない問題がある。なぜなら、オンカジ芸人の中には、もともとギャンブル好きとして知られていて、ギャンブル関連の仕事をしていた人もいるからだ。たとえば、競馬やボートレースは公営ギャンブルとして認められているので、関連する番組やイベントの仕事もある。

 ギャンブル好きの芸人は趣味を生かしてそういう仕事に携わる機会があったはずなのだが、オンラインカジノで違法賭博に手を染めてしまったということになると、一気にイメージが悪くなり、ギャンブル関係の仕事ができなくなってしまう。

 ギャンブルが好きなのは本当のことなのに、その特技を生かせなくなってしまうのだ。これは彼らにとって致命的な打撃であると言える。実際、オンカジ芸人の中にはそういう人も含まれていた。その部分のダメージは決して小さいものではない。

 オンラインカジノ問題を乗り越えるために必要なのは、自身の過ちを真正面から認めた上で、それを笑いに変えることだ。不祥事を自分からネタにするのは不謹慎だと思われる人もいるかもしれないが、どんなことでも笑いにするのが芸人の仕事である。彼らの周りにいる芸人仲間たちも、あえてその話題に触れてイジってあげることで、その芸人のサポートをしているという感覚がある。

 オンラインカジノ問題に限らず、不祥事を起こしたときにこそ、それをどうやって自分の中でネタに昇華するのかというのが問われる。世間の空気を読み間違えれば、さらなる批判を招くリスクもあるが、上手くいけば芸人としての面白さをアピールすることもできる。

 結局のところ、消える芸人と生き残る芸人の違いは、それぞれの実力と覚悟にある。不祥事があってもそれをはねのけて、笑いを取ることに誠実に向き合うことができれば、明るい未来が見えてくるだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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