「お葬式のような顔をして過ごす学生も…」 日本人留学生にも影響 ハーバード大でいま何が起きているのか、同大の研究者が明かす

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「名門ゆえの特権意識が確かにある」

 政権との対立が長引けば、ハーバード大だけでなく国家全体にも不利益を生じる。

「研究費やビザの面でハーバード大が不安定になったことで、優秀な研究者や留学生が諸外国に働き口を求めています。研究者のバーゲンセール状態で、EUの大学は今どこも優先してアメリカの大学から人を採ろうとしています。政権が目の敵にする中国ももちろん例外ではなく、敵に塩を送る格好なのです」(前出の日本人教員)

 ハーバード大学大学院への留学経験がある信州大学特任教授の山口真由氏が、同校と政権との対立を分析する。

「私も通った法科大学院は“クレムリン”と揶揄されるほど左派の教授が多く、リベラル色が濃いところでした。良くも悪くも名門ゆえの特権意識が確かにあり、保守派のトランプ氏には格好の標的です。関税交渉を見ていても、彼は歯向かう相手には容赦しない。徹底的にたたくつもりでしょう」

「誰も望まない方向に進みつつある」

 補助金とビザに関わる二つの裁判については、

「関税と違いトランプ支持者に直接の不利益がないため、トランプ氏には手を緩める理由がない。長期化し、年内に決着がつくことはないと思います。もし大学が勝訴しても、留学生コミュニティーの崩壊など損害は計り知れません。一方、海外の大学への頭脳の流出は政権にとっても間違いなく痛手で、誰も望まない方向に進みつつあります」(山口氏)

 ハーバード大学の校訓は「真理」。いたずらに混乱を生む争いの中にそれを見つけることは、秀才たちにも難しいだろう。

 前編【「性的マイノリティーに関する研究費の支給が停止されたと聞いた」 ハーバード大の日本人研究者が明かす なぜトランプ大統領はハーバード大を目の敵にするのか】では、トランプ大統領の苛烈な要求内容について紹介するとともに、同大の日本人研究者による現地の声を報じている。

週刊新潮 2025年6月12日号掲載

特集「名門・ハーバード大の日本人研究者に訊く “トランプ弾圧”への『本音』と学内の『異変』」より

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