「性的マイノリティーに関する研究費の支給が停止されたと聞いた」 ハーバード大の日本人研究者が明かす なぜトランプ大統領はハーバード大を目の敵にするのか

国際

  • ブックマーク

留学生、職員の情報をチェックできるようにしろと要求

 ところが4月11日に送られてきた書簡では、要求が拡大していた。

「留学生や採用する職員の情報を政権側に明け渡し、チェックできるようにしろという項目が加わりました。政権が敵視する中国共産党との関係が疑われる学生や、パレスチナを支援するデモに参加した学生の情報も欲しがっています。大学の人事権や学生の個人情報を侵す要求で、DEIの廃止などより余程受け入れ難い。怪しいからといってアレもコレも開示していては、そのうち学内にプライバシーなんてなくなってしまいます。大学としては訴訟してでも突っぱねるしかない書簡だったのです」(同)

 実際あまりにも過干渉な内容に「政権が誤って送付したのでは」との見方を報じる米メディアもある。真相は知る由もないが、補助金の凍結にも屈さず要求をのまない大学に対し、トランプ大統領が怒り心頭であることは確かなようだ。

「SNSで大学を“極左の機関”“民主主義の脅威”とあげつらい、ハーバード大の弁護士は優秀ではないとまで投稿しています」(先の記者)

政権の意に沿わない研究テーマは……

 22億ドルの凍結以外にも、医療分野への研究補助金約10億ドル(1400億円)の削減や、1億ドル(140億円)相当の行政との調査・研究契約の打ち切りなど、政権は矢継ぎ早に方針を打ち出し、大学への圧力を強める。岡山大学呼吸器・乳腺内分泌外科からハーバード大学教育病院に研究員として派遣されている大谷悠介氏は「すでにその影響が出ている」と語る。

「学内では政権の意に沿わない研究テーマについて、研究費の申請時に慎重な対応を求めるよう通知されています。例えば性的マイノリティー患者の乳がん治療について研究していた研究室では、すでに研究費の支給が停止されたと聞きます」

 ハーバード大は潤沢な寄付金を運用し、昨年6月の会計年度末時点で532億ドル(約7兆6500億円)の基金を擁する。それでも先行きを考え財布のひもを締めるのは、トランプ大統領が大学への課税強化も仄めかしているからだという。

「大学はそれを見越して、昨年末から教員や研究員の新規採用をしなくなりました。他にも研修など、不要不急のプログラムから削られています。7月の給料アップがないことも大問題。アメリカでは年々物価が上がるので、据え置きでは実質賃金が目減りしてしまうのです」(前出の日本人教員)

次ページ:“貴重な枠が外国人に占められている”と懸念する声

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。