トランプ政権から「共産主義者」と見切られた李在明、いつまで猫を被るのか――鈴置高史氏が読む

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トランプ関税は日本以上に痛手

――しかし、李在明氏は大統領選挙では「韓米関係重視」を打ち出しました。

鈴置:米国の怒りを見て180度、軌道修正したのです。韓国人は保守も含め、米国が中国と勝負を決める戦いに出ていることに気づかない。仮に気づいても見えないフリをしてきた。ところが、弾劾理由に対する米国の反発は韓国人の予想以上に激しいものでした。

 追い打ちをかけたのがトランプ関税です。韓国の輸出はGDPの30%以上を占めます。日本の輸出依存度は15%程度ですので、韓国の高さが分かります。韓国は最大の輸出先である米国の関税引き上げに極めて脆弱なのです。

 反米姿勢を少しでも見せたら、関税でお仕置きされるのは目に見えている。そこで李在明氏は「韓米同盟が第一だ」「韓米日の協力も重要だ」と猫を被って見せたのです。

――いつまで猫を被るのでしょうか?

鈴置:トランプ関税の問題が解決するまではおとなしくしているでしょう。ただ、台湾有事などで明確に米国側に立つよう求められた時は、抵抗すると思います。左派に限らず、韓国人は中国からの報復を極度に恐れています。

 そもそも反米派の存在理由は「国際政治の舞台で米国のコマにならないこと」なのです。多くの日本人とは異なって「台頭する中国を米国が抑え込むというのなら、協力しよう」とは考えないのです。

 だから李在明氏は時々、米中二股の本音を見せてしまいます。投票日直前に米TIME誌のインタビューを受けた際「もし、台湾が中国に攻撃されたら助けるか」と聞かれて「その答えは宇宙人が地球を侵略してきたときに考える」と述べ、はぐらかしたのです。

日本のせいで中国包囲網に加われぬ

――米中二股を続けようとしても米国が許さないのでは?

鈴置:韓国にはいつも使う奥の手があります。「日本が歴史問題で謝らないので、国民感情から韓米日の軍事協力――中国包囲網には参加できない」と言い張る手です。

 韓国外交部が盧武鉉時代に開発した手法で、保守の朴槿恵(パク・クネ)政権を含め、多くの政権がこの手を使ってきました。『韓国消滅』第4章「日本との関係を悪化させたい」で詳述しています。

 なお、この手を使うには日韓関係を悪化させる必要があります。そこで、いわゆる徴用工問題や従軍慰安婦問題で日本企業や日本政府が責任をとっていないと、また言いだす可能性があります。

 新政権の国家安保室長に魏聖洛(ウィ・ソンラク)元駐露大使が指名されました。外務省の生え抜きで、その手口に熟知したこの人が反日の司令塔になっていくのではないでしょうか。

 李在明政権は実用主義だから感情的な反日はしない、という人が多い。そうかもしれない。しかし、中国包囲網に組み込まれないという「実用」のために反日することだってあるのです。

 ちなみに国情院長に指名された北朝鮮と近い関係の李鍾奭(イ・ジョンソク)氏が対北政策を担うのが確実視されています。

――韓国のそんな見え透いた言い訳に米国が騙されるでしょうか?

鈴置:これまでも騙されるというよりは、苦笑いしながら聞いていた感じです。大国は同盟国の顔も立ててやらねばならぬものです。でも米国も、もう甘い顔はできません。台湾有事の可能性が高まっているうえ、どうせ韓国は「共産主義者に乗っ取られた」のです。

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