トランプ政権から「共産主義者」と見切られた李在明、いつまで猫を被るのか――鈴置高史氏が読む
米韓の間に奇妙な空気が流れる。6月4日に発足した李在明(イ・ジェミョン)政権をトランプ(Donald Trump)政権が反米集団扱いするのだ。韓国観察者の鈴置高史氏も「これほど露骨な韓国イジメを見るのは初めて」と驚く。
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「中国の言いなりになるな」
鈴置:李在明政権を見るホワイトハウスの目が異様です。これまでなら韓国に新しい大統領が誕生すると直ちに報道官が就任を祝ったうえ、米韓首脳の電話協議を設定したものでした。
しかし、今回は全く異なりました。現地時間の6月3日に李在明政権誕生に対するコメントを聞かれたホワイトハウスのK・レビット(Karoline Leavitt)報道官は、手もとの書類を繰りながら「(李在明大統領に関する答弁資料は)ここにあるはずなんだけど……。ない。探しときますから」とにっこり笑って誤魔化したのです。
ホワイトハウスの「Press Secretary Karoline Leavitt Briefs of Member of the Media, June 3, 2025 」(6月3日、開始23分32秒から)で視聴できます。
大統領に正式就任はしていませんでしたが、韓国メディアが一斉に当選確実を打ち、李在明氏も勝利宣言した後でした。明らかに李在明政権を無視して見せたのです。結局、韓国紙をはじめ世界のメディアは、個別にホワイトハウスにコメントを求める羽目に陥りました。
メディアへのメールによる回答も異常でした。就任祝いの言葉もないうえ、唐突に「中国の干渉への懸念」が述べられていたのです。
ロイター通信の記事「White House calls South Korea election ‘fair,’ expresses concern about Chinese influence」(6月3日、日本=韓国時間6月4日午後6時1分に更新)からコメントを全て引用します。
・The US-ROK Alliance remains ironclad. While South Korea had a free and fair election, the United States remains concerned and opposed to Chinese interference and influence in democracies around the world.
韓国を乗っ取った共産主義者
――「世界中で中国が民主主義に干渉することに懸念し、反対する」と言い切っていますね。
鈴置:もちろん、新政権が中国の言いなりになっていくことへの警告です。しかし韓国は今現在は一応、同盟国ですから新政権が発足した瞬間からこれほど露骨に牽制するのも異例です。
M・ルビオ(Marco Rubio)国務長官の声明「Election of Republic of Korea President Lee Jae-myung」(6月3日)と比べてもホワイトハウスの姿勢の異様さが分かります。
ルビオ声明は冒頭で祝いの言葉を述べたうえ、米韓は同盟をより現状に合わせ、米日韓の協力も深めると謳う常識的なものでした。もちろん「中国による属国化」への懸念といった過激な部分はありませんでした。
――なぜ、ホワイトハウスと国務省でこれほどの差があるのでしょうか?
鈴置:先ほど引用したロイターの記事が謎解きしています。トランプ大統領に強い影響力を持つ極右のインフルエンサー、L・ルーマー(Laura Loomer)氏が6月3日、X(旧・ツイッター)で「韓国の新政権は共産主義者だ」と決め付けたと指摘したのです。記事からXのその部分を拾います。
・The communists have taken over Korea and won the Presidential election today. This is terrible.(本日、共産主義者が韓国を乗っ取り、大統領選挙で勝った。大変だ)。
この記事によると、今年に入ってルーマー氏がトランプ大統領に「不忠な安全保障担当者のリスト」を提出した後、何人かのホワイトハウスの高官が解雇されたそうです。
報道官らホワイトハウスのスタッフが李在明政権と距離を取るのも無理ありません。ルーマー氏のXを大統領は読んでいないかもしれませんが、下僚はクビになるリスクを考えざるを得ないのです。
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