「まさかのデビュー」から歌手生活24年目に突入! “踊らされちゃう歌謡曲”で火がついた竹島宏が愛され続ける、納得の理由

  • ブックマーク

最大の人気曲「夢の振り子」、未経験で挑んだダンスにまさかの大爆笑!?

 ここからは、竹島宏のサブスク人気曲を見ていこう。ちなみに彼のSpotify月間リスナーは3,000~4,000人と、24年目となるキャリアの割には少ない。しかも、上位はここ10年間でリリースされた楽曲ばかりだ。それだけ近年になって注目されてきたのだろう。

 再生回数ランキング第1位は、NHK-BSドラマ『大富豪同心』主題歌に起用された「夢の振り子」。その第2シリーズ『大富豪同心2』の主題歌だった「向かい風 純情」が4位、第3シリーズ『大富豪同心3』の主題歌「絆…この手に」がシングルのカップリング曲ながら13位と、総じて好調だ。「夢の振り子」については、

「やっぱりサビ頭の楽曲で、ドラマ主題歌なので人気なんでしょうね。僕のファンというよりも、時代劇のファンの方が、なんとなく検索して聴いてくださっているのかも。このタイアップは、その前年に出した『恋町カウンター』で、僕が踊りながら歌っているのがきっかけになったんです。というのも、この『大富豪同心』は王道の時代劇というより、コメディタッチな要素もあるドラマで。最後はハッピーエンドとなって、演者さんたちが踊って終わるようなエンディング曲を探している段階で、僕にお声がけいただいたんです」

 ちなみに、この「夢の振り子」、そしてその前作「噂のふたり」、前々作「恋町カウンター」は、“踊らされちゃう歌謡曲”と称して、竹島が振り付きで踊っている点も興味深い。近年は、顔の周りの手振りを中心としたシンプルなダンスが多い中で、この3作は、全身を使って竹島が歌い踊っているのだ。

 しかも、竹島はそれまでダンスと縁がなかったせいか、決して下手ではないが彼の几帳面さが前面に現れた仕上がりになっており、なぜか笑顔がこぼれてしまうのだ。例えて言うなら、“新人教師がやたら張り切って力んで踊るダンス”が近いだろうか。

「ですよね(笑)。まず『恋町カウンター』が、今までにないポップな曲だったので、ただ横揺れしながらステップを踏むよりも、一度プロの方に所作的なものを教えていただこうと思いまして。ダンスの先生に、少し前に流行った星野源さんの“恋ダンス”のように可愛らしいものを作ってくださいとお願いしたんです。そうしたら、先生がフルコーラスで振りを付けてくださって。“歌の邪魔になっちゃいけないから、できるところだけでいいからね”とおっしゃったけれど、僕としては、“せっかく考えてくださったのに、もったいない”と思って、ダンス未経験ながら最終的に全部覚えたんです。

 それを初お披露目したのですが……あれは忘れもしない、大阪の会場でのこと。なんと最初から最後まで、大爆笑が起きたんです! 歌を歌って笑われることは生まれて初めてだったので、めちゃくちゃ驚いたのですが、終わってからファンのみなさんが“宏くんがあまりに一生懸命なのが可愛くておかしくなっちゃったのよ”と口々におっしゃられて(笑)」

 確かに彼の場合、“愛されキャラ”だからこその笑いというのが大きいだろう。

「“どんなに下手でも手を抜かずにやっているのを感じてくださったから盛り上がったのだ”と自分に言い聞かせました。別の熱心なファンの方からは、“これまで美しい曲を歌ってきたんだから、こんなラジオ体操みたいなダンス(笑)はファンクラブイベントだけにしたほうがいいのでは……”と心配するお手紙もいただいたんです。でも、賛否両論が出るくらいインパクトのある曲とダンスなんでしょうね。

 実際、この『恋町カウンター』から『夢の振り子』にかけては、『うたコン』(NHK)さんにもかなりの頻度で出て、いろんな方々と踊る機会を作っていただき、“頑張って紅白(歌合戦)を目指そう!”と意気込んでいました。そんな気持ちになれたのも、 “踊らされちゃう歌謡曲”のおかげですね!

『恋町~』の次の『噂のふたり』のミュージックビデオは、実業家のROLANDさんがお勤めの店をお借りしましたよ。その時の本命にしていた候補曲のほうは、風邪を引いてイマイチ歌い切れなくて。対して『噂のふたり』のは、先生方も軽いノリで作り、僕も気負わず歌ったら、声がスコーンと抜けて良い意味でセクシーだと言われ、こちらを表題曲にすることになったんです」

 そういった“軽いノリ”の流れがドラマタイアップに繋がり、今もサブスクで一番聴かれている曲になるのだから、ヒット曲というのは面白い。

「『夢の振り子』は、今のコンサートでも大抵歌っています。やっぱり会場中が手拍子で盛り上がりますからね。あと、音楽番組を観ない時代劇ファンの方との接点でもあるので、歌うようにしています。さすがに今は、ポイントだけ軽く踊っています(笑)」

 竹島は、物腰が柔らかく周囲の判断にただ身を任せるようでありつつ、ファンやスタッフを思いやる気配りの細かさが随所に見て取れた。だからこそ、デビュー20年を過ぎてもなお、新たなリスナーを獲得しているのだろう。次回は、コロナ禍にX(旧Twitter)での投稿を始めた“花だより”や、新曲「小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い」について語ってもらおう。

【INFORMATION】
2025年6月11日、30枚目のシングル「小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い」発売!

Aタイプ
1 小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い 作詞:松井五郎 作曲:幸耕平 編曲:坂本昌之
2 こころの詩(うた) 作詞:松井五郎 作曲:幸耕平 編曲:坂本昌之
3 小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い (オリジナル・カラオケ)
4 こころの詩 (オリジナル・カラオケ)

Bタイプ
1 小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い 作詞:松井五郎 作曲:幸耕平 編曲:坂本昌之
2 その先の明日へ 作詞:松井五郎 作曲:幸耕平 編曲:坂本昌之
3 小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い (オリジナル・カラオケ)
4 その先の明日へ (オリジナル・カラオケ)

【PROFILE】
竹島宏(たけしま・ひろし)
1978年、福井県出身。明治大学在学中に作詞家の久仁京介にスカウトされ、2002年7月24日にシングル「いいもんだ いいもんだ」でデビュー。’13年の「北哀愁」で初のオリコンTOP20入り、’20年の「はじめて好きになった人」で初のオリコンシングルTOP10入り、以降’24年まで6作連続TOP10入りを継続中で、演歌・歌謡曲部門では常に1位か2位となっている。’25年は初のミュージカル『プラハの橋』を熱演。6月には新曲「小夜啼鳥(サヨナキドリ)の片思い」をリリース。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。